二 遺産を分割する手続きには、遺産分割協議による方法と、家庭裁判所で行う遺産分割調停又は遺産分割審判による方法があります。
遺産分割協議は、共同相続人全員が話し合いをして、「遺産分割協議書」を作成することによって成立します。1人でも欠けると遺産分割協議は成立しません。なお、未成年者と親権者が共に法定相続人になっている場合は、未成年者のために「特別代理人」を選任しなければなりません(民法826条)。
遺産分割協議の結果に基づいて不動産の相続登記をするには、各人が実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書を添えて、相続登記の申請を行います。なお、共同相続人のうちの誰か一人が不動産の全部を相続するような場合は、他の共同相続人の全員が「相続分なき旨の証明書」を提出する簡便な方法が広く行われていますが、不動産以外の遺産を含めて詳しい取り決めをする場合には、この方法は後々トラブルになることがありますので避けたほうがよいでしょう。
三 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調なわない時は、家庭裁判所に遺産分割の調停又は審判を申し立てる必要があります。家庭裁判所は、遺産の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活状況その他一切の事情を考慮して行います(民法906条)。
四 共同相続人中に、被相続人から結婚の際や生計の資本として贈与を受けた者(特別受益者といいます)がある時は、遺産の分割にあたっては、現存する遺産に計算上その贈与の価額を加えたものを遺産とみなして法定相続分の価額を算出し、その者の相続分から贈与の価額を差し引いたものがその者の相続分とされます(民法903条)。
また、共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした者があるときは、その相続人はまずその度合に応じた「寄与分」をもらう権利があり、残りを法定相続分に従って配分します(民法904条の2)。
五 ご質問のケースの場合、お兄さんが以前受けた贈与分は、特別受益として遺産に加えて計算すべきだと主張できます。また、あなたがお父さんの療養看護を行ったことが特別の寄与として認められれば、あなたは寄与分をもらえることになります。
(いずみ第7号1998/2/10発行)