◎8月31日、共同通信は次のような記事を配信しました。
「離婚後親権、試案先送り 自民「議論反映されず」 法制審への介入と波紋も
民法の親権制度の在り方など、離婚後の子どもの養育について検討する法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会が30日、開かれた。当初この日に予定していた中間試案取りまとめは、自民党内の反発が激しかったことを踏まえて先送りされた。9月にも予定していたパブリックコメント(意見公募)の開始も遅れる。
26日に自民党法務部会があり、試案に「分かりにくい」「法務部会での議論が反映されないのか」などの意見が出ていた。法制審の事務局を担う法務省側が与党に配慮した形。法相の諮問機関で法律の専門家らで構成する審議会が外部の介入を受けたとも捉えられ、政治との関係性を巡って議論を呼ぶ可能性がある。
法制審部会が取りまとめる予定だった中間試案は、(1)父母双方の「共同親権」と「単独親権」を選択できる(2)現行民法のまま単独親権だけを維持する―の2案を提示。さらに(1)は共同、単独のどちらを原則、どちらを例外と位置付けるかなどで案が分かれ、10近い選択肢を併記していた。
法務省によると、この日の会合では、複数の委員から「法制審として独立して議論すべきだ」との意見が出されたものの、自民党法務部会の指摘を踏まえ「議論が熟していない」という方向では一致したという。案をどう見直すかなど今後の見通しは立っていない。
離婚後の親権に関しては「父母どちらも子育てに関われるようにすべきだ」として共同親権導入を求める声がある一方、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待を受けているケースで「元配偶者との関わりを避けたい」「子どもの安全を守れない」などとして反対意見も根強い。
海外では父母共同での養育が可能な国が多く、欧州連合(EU)欧州議会は、日本人配偶者による「連れ去り」を問題視している。」
◎両親が離婚後の子どもの親権については、どちらか一方だけが持つ「単独親権制」、父母双方が共同で持つ「共同親権制」があります。世界の国々では、中国・韓国を含め、圧倒的に共同親権制が採用されています。お隣の韓国でも1990年に「選択的共同親権制」が導入されました。
たしかに、夫のDVや虐待が原因となって妻が子どもを連れて離婚したような場合、共同親権とすると不都合が生じることがあることは否定できません。しかし、離婚はそのようなケースばかりではありませんし、何よりも子どもにとって、両親の離婚後も、両方の親から愛情を受けて養育されることは大変重要です。
様々なケースに対応でき、社会的なケアも含めて、子どもの福祉にとってベストな制度設計が求められます。今後の法制審での議論に注目していきたいと思います。
(弁護士 岩城 穣)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.52」 2022.9.9発行)