明治時代から約140年間にわたって、我が国では成人年齢は20歳とされてきましたが、民法改正により、この4月1日から成人年齢がこれまでの「20歳」から「18歳」に引き下げられます。
3月31日時点で18歳・19歳の人は、4月1日をもって一気に成人扱いをされることになります。
これによって法律上変わること、変わらないことを整理すると、次のとおりです。
≪これまでと変わること≫
①18歳になると、親の同意なく、一人で契約ができるようになります。
自分の住む場所(住所)、大学進学や就職などの進路、各種の契約部屋の賃貸借・スマホの契約・各種クレジットカード契約・車やバイクの購入など)が一人でできます。
18歳、19歳だった人にとっては自由が広がりますが、これまでは親が行使できた「未成年者取消権」が行使できなくなるので、契約には慎重さが求められます。
また、18歳・19歳の女性がAV(アダルトビデオ)等に出演する契約をしても親が取り消せなくなり、被害の多発が予想されることから、これについては現在国会で、特別に取り消せることにする立法の制定が議論されています。②18歳になると、法律上は親の親権に服さなくなります。
③男女とも親の同意なく結婚できるようになります。
結婚可能年齢はこれまで男性18歳・女性16歳で、かつ、20歳未満の人が結婚するには親の同意が必要でしたが、男女とも18歳で親の同意なく結婚できることになります。
④親の同意なく訴訟提起(裁判を起こすこと)もできるようになります。弁護士に依頼することも可能になります。
⑤パスポートは、18歳以上は有効期間10年間のパスポートが取得できます(これまでは20歳未満は5年間のパスポートしか取得できませんでした)。
⑥自治体などが行う「成人式」については、特に法律で定められておらず、主催者の判断にゆだねられることになりますが、今後は18歳を迎える人を対象に行うようになっていくのではないでしょうか。もっとも、その場合でも、高校3年の1月は受験や就職を控えている人が多いので、1月に行わない自治体が多くなると予想されます。
≪これまでと変わらないこと≫
①選挙権は、既に18歳から与えられています。
②飲酒、喫煙、公営ギャンブル(競馬、競輪、競艇など)は、これまでと同じく20歳にならないと許されません(これらは青少年の健康や非行防止の観点によるものです)。
③親が離婚した場合の養育費は、「未成年の子」ではなく「(経済的に)未成熟の子」のために支払われるものなので、自動的に影響を受けるものではありません。これまでも、20歳未満でも就職して経済的に自立した子に対する養育費は不要でしたし、20歳を超えても、例えば大学を出るまでは養育費が支払われることが多くありました。
もっとも、18歳成年制になったことから、養育費の支払いは17歳までとしておき、子どもが18歳になった時点で直接子どもと養育費について取り決めをする例が増えるのではないかと思われます。
④18歳・19歳の人には引き続き少年法が適用されます。ただし、18歳・19歳の少年は「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる取扱い(実名報道など)がなされます。
私たち弁護士が行う法律相談も、今後は18歳・19歳の人からの相談が増えてくるかもしれませんね。
(弁護士 岩城 穣)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.47」 2022.3.28発行)