民事執行法の改正により、財産開示命令に違反した場合に罰則が科されることになりました!
これまで、金銭債権を有する債権者が判決などの債務名義を取得しても、債務者の財産の所在が不明の場合は強制執行できず、泣き寝入りとなることが少なくありませんでした。とりわけ、扶養義務に基づく養育費等の不払いは、債権者の生活に直結し、深刻な問題を引き起こします。
このような問題を解消すべく、平成15年の民事執行法改正により「財産開示手続」が導入されたものの、違反に対するペナルティが脆弱で実効性が低く、ほとんど利用されていないのが実情でした。
そこで、令和元年5月17日に改正された民事執行法においては、第1に、「財産開示手続」が見直され、申立権者の拡大が図られるとともに、財産開示命令に違反した場合のペナルティが強化されることとなりました。具体的には、正当な理由なく裁判所の呼び出しに応じない開示義務者や、正当な理由なく陳述を拒み又は虚偽の陳述をした開示義務者に対し、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることとなりました。従来の過料から刑罰へと、ペナルティが大幅に強化されたのです。
第2に、債務者が所有する①不動産、②預貯金等、③給与債権について第三者からの情報取得を可能とする「情報取得手続」が新設されました。これにより、特に、預貯金等の財産に対しては、財産開示手続を経ることなく情報収集が可能となるため、差押えの実効性が高まることが期待されます。
改正民事執行法の適切な運用により、債務者の財産隠蔽から救済される債権者が増えることを切に願います。
(弁護士 井上 将宏)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.40」 2021.8.27発行)