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エッセイ
憲法と小選挙区制・「二大政党制」論

第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

◆圧倒的多数を占めた自・公と民主党

 昨年11月の衆議院選挙では、自民党と民主党の「政権選択」が叫ばれ、自民・公明・保守新をあわせた与党3党が「絶対安定多数」を超える275議席(その後保守新党は自民党に合流)、自由党と合流した新民主党も40議席増の177議席となり、これらの党の議席占有率は実に94%となりました。他方で、共産党は20議席から9議席、社民党は18議席から6議席へと激減し、両党の議席をあわせてもわずか15議席(占有率3%)となってしまいました。


◆小選挙区制か比例代表制か

 現在の制度は小選挙区制300、比例代表制はブロック制で180(前回より20削減)であり、「小選挙区比例代表並立制」といっても、比例代表制はいわば「付録」みたいなものです(民主党は、これをさらに80議席減らすことを「公約」しています)。  憲法は選挙制度について直接規定していませんが、主権者は国民であるとし、さまざまな基本的人権を保障し、様々な価値観を持つ国民が選出した議員が、「国権の最高機関」「唯一の立法機関」である国会を構成して法律を制定するとしているのですから、国民の意思が国会の構成にできるだけ正確に反映する、いわゆる「社会学的代表」を要請していると考えられます。したがって、「民意」を過剰にゆがめて、大政党に得票率をはるかに超える議席を与える小選挙区制が憲法に適合しているかどうか、大きな疑問があります。
 惨敗したとされる共産党、社民党も、比例代表ではそれぞれ460万票(約8%)、300万票(約5%)を得ており、仮に「完全比例代表制」をとった場合、それぞれ38議席、24議席を得ることになるのです。


◆「二大政党制」論と、国民の政治離れの加速

 しかも、この小選挙区制のもとでの「二大政党制」論は極めて危険です。自民党も民主党も、「憲法改正」や「消費税の税率アップ」などの公約は共通しており、これらに反対する国民は事実上選択の余地がありません。「よりまし」を期待して仕方なく自民・民主党に投票するか、「死票」覚悟で小政党に投票するか、さもなくば棄権するしかないのです。同じような制度のアメリカでは、投票率は30%台にまで落ち込み、世論調査では4割の国民が「主要な第三党が必要だ」と答えています。


◆最悪の状況下での、最悪の政治

 いま日本は、戦後最悪の不況のもとで、これまで日本の産業を支えてきた中小企業や労働者が倒産やリストラ、超長時間労働で苦しんでいますが、選挙の結果はそれを改善するどころか、逆に「痛み」を促進する勢力が大きく議席を増やしました。イラクへの自衛隊派遣も間近に迫り、また、ここ数年のうちに憲法や教育基本法の「改正」、消費税アップの動きも本格化するでしょう。
 小選挙区制や二大政党制は憲法に適合しているのでしょうか。マスコミの報道姿勢はこれでよいのでしょうか。少なくとも現行制度のもとでは、このような制度や政治に危機感を持つ人々が小異を捨てて大同につき、平和と人権を求める「第三の極」を確立することが求められていると思います。

(いずみ第16号「憲法再発見 第10回」2004/1/1発行)

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