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春告鳥 第5号
過労死の悲劇をなくすために過労死防止法に基づく取組みが本格化

1 過労死防止法の施行から2年が過ぎ、3年目に突入しました。この間、2015年7月に過労死防止大綱が閣議決定され、2016年10月7日には初めての「過労死白書」が公表されました。

 この「白書」は、国として過労死等の概要とその防止のために講じた施策の状況について毎年国会に報告する文書で、今回が第1回の白書となります。

 過労死の現状把握も、過労死防止対策の実施状況も、まだまだ不十分ではありますが、今後の出発点として大きな意味を持つものです。また、過労死は欧米やアジアでも相当数発生していると言われていますが、まだ現状把握も防止対策も、ほとんどなされていません。その意味で、この白書は国際的にも大きな意義があるといえます。

 

2 毎年11月の「過労死防止月間」も3回目を迎え、全国各地で開かれる国主催の「過労死防止対策シンポジウム」は、今年度は全国43都道府県にまで広がりました。 

 11月11日に開かれた「大阪会場」では、昨年の2倍以上の486人もの参加者があり、①大阪労働局の労働基準部長の鈴木伸宏氏の開会挨拶、大阪府社会保険労務士会副会長の岡本茂氏の来賓挨拶に続いて、②大阪労働局監督課長の前村充氏の報告「過労死防止に向けた大阪労働局の取組」、③過労死防止全国センターの事務局長である私の報告「過労死防止法施行から2年」、そして休憩を挟んで、④過労死問題をテーマにした桂福車師匠の「エンマの願い」の上演が行われました。⑤続いて4人の過労死遺族の体験談では、会場は静まり返り、ハンカチで涙を拭う人も見られました。

 

3 平成28年度の新しい啓発事業として、高校や大学での過労死防止の啓発授業が始まりました。弁護士や過労死遺族が高校等に講師として派遣され、過労死防止の大切さやワークルールについて授業を行います。既に自らアルバイトで働いたり、近い将来社会に出て働くことになる若い世代の人たちが過労死について学ぶことは大きな意味があります。

 

4 このように、過労死防止の取組みは着実に進み始めていますが、その一方で、昨年10月、広告会社の最大手である電通の新入女性社員の高橋まつりさん(24歳)が長時間労働とパワハラの末過労自殺し労災認定されたことが報道され、社会に大きな衝撃を与えました。

 電通では、25年前の1991年にも入社2年目の青年が過労自殺し、両親が会社を訴えた民事訴訟で、最高裁が会社の労働者に対する安全配慮義務違反を断罪する判決が下されていました。過労死防止法の施行後にもかかわらず、同じ会社で同じような過労自殺が起こったことは、この国から過労死をなくすことがいかに大変なことであるかを、改めて浮き彫りにしたといえます。

 高橋さんの死を無駄にしないためにも、過労死防止の取組みにいっそう力を入れていきたいと思います。

                               (弁護士 岩城 穣)

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