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春告鳥 第17号
岩城弁護士の過労死問題最前線

◆2022年9月30日~10月1日の2日間、過労死弁護団全国連絡会議の第35回総会が大阪市内で開かれました。大阪で開催されるのは2013年以来9年ぶり4回目でした。

 ウェブでの参加者も含めて全国から多数の弁護士が参加し、例年どおり、様々な事件やテーマについて活発な議論がなされました。中でも、東大社会科学研究所の水町勇一郎教授の講演「脳・心臓疾患の労災認定基準と『労働時間』について」は、労災認定実務で今最も問題となっている「労働時間」概念について深く分析されたもので、大変貴重なものでした。今後、先生の見解や今後発表される論文も踏まえて、過労死弁護団として意見書を作成し、厚労省に提出する予定です。

◆11月21日、厚労省で第23回過労死等防止対策推進協議会が開催されました(私はウェブ参加)。当事者委員(過労死遺族)、労働者委員、使用者委員、専門家委員のほぼ全員から、10月26日に公表された「令和4年版過労死白書」の内容をはじめ、過労死をめぐる状況について活発な意見が述べられました。

 私のほうからは、①平成13年~令和3年の21年間で、脳・心臓疾患の労災認定請求件数は700件~900件でほぼ変わっていないのに対し、業務上認定の件数は平成14年から25年までは300件台であったのに、その後減少傾向が続き、ここ2年間はほぼ半減するに至っていること、②令和3年9月に脳・心臓疾患の認定基準が改定されたにもかかわらず、減少傾向に歯止めがかかっていないように見えること、③その原因は、令和3年3月に厚労省が出した通達で「労災認定のための労働時間は労基法32条の労働時間と同義である」と狭く解釈していることが影響しているのではないか、と意見を述べました。

 厚労省の補償課の担当者は、①・②については否定せず、③については明確な答弁を避けました。労基法32条の労働時間は使用者の指揮命令のもとに時間外手当を発生させるものであるのに対し、労災認定基準における労働時間は業務の過重性の指標となるもので、あくまで過重性の観点から評価されるべきです。この点の誤った通達や運用を改めさせていく必要があります。

                              (弁護士 岩城 穣)

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