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春告鳥 第16号
パワハラ防止措置義務化について

 2022年4月1日から中小企業においても、パワハラ防止措置をとることが義務付けられました。2020年6月1日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(通称「パワハラ防止法」)が施行され、すでに大企業においては職場におけるパワーハラスメントの防止対策が事業主に義務付けられていました。中小企業においても、今年の4月に義務化されるに至りました。

 厚生労働省が公表した令和2年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害に関する事案において「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が出来事(※)別の支給決定件数のトップになっています。

 また、厚生労働省が2017年4月に公表した平成28年度の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」において、従業員の悩みや不満を相談する窓口において相談の多いテーマは、パワーハラスメントが32・4%ともっとも多く、厚生労働省が発表した「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、相談内容として「いじめ・嫌がらせ」が9年連続でトップとなりました。

 パワーハラスメントを行う人は、「自分がパワーハラスメントを行っている」という自覚を欠いているケースが少なくありません。パワーハラスメントが日常的になってしまうとより一層、行為者本人にとって、パワーハラスメントは無意識の言動になってしまいかねません。

 一方で、「パワーハラスメント」と「適切な教育・指導」の線引きが難しいようなケースがあることも確かです。何でも「パワーハラスメント」だと決めつけることで、必要な教育・指導がなされないという事態は回避する必要があります。

 こうしたことから、上記法の施行によって、経営者・労働者を問わずパワーハラスメントの知識を深めてそれぞれが意識的に防止に努める措置を講ずることが義務化されました。

 厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいうと整理しました。また、職場のパワーハラスメントに当たりうる6類型も整理し、その類型の中で上記3つの要素を満たすと考えられる例なども示しています。

 企業活動に関わるすべての人は、パワーハラスメントについての正しい知識を備え、パワーハラスメントのない職場環境をつくることを求められているといえます。こうした取り組みによって、いじめやパワーハラスメントの増加に歯止めがかかることを祈るばかりです。

 

※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの。

                              (弁護士 安田 知央)

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