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春告鳥 第14号
岩城弁護士の過労死問題最前線

◆過労死等防止対策推進法に基づき、過労死等防止対策を効果的に推進するための「大綱」が2015年に策定され、3年ごとに改定されることになっています。2018年の改定に続き今般2回目の改定が行われることになり、1月26日、3月24日、5月25日の3回にわたって過労死等防止対策推進協議会で議論が行われてきました。20人の委員のうち専門家委員3人(川人博、黒田兼一、岩城)と当事者委員4人(寺西笑子、高橋幸美、工藤祥子、渡邉しのぶ)は、7人の連名で3月1日、4月15日の二度にわたり意見書を提出するとともに、協議会の場で積極的に意見を述べました。その結果、7月下旬に発表された新しい「大綱」には、私たちの意見書の内容が相当程度取り入れられました。

◆また、2001年に制定された過労死(脳・心臓疾患)の認定基準の20年ぶりの改定について、2020年6月から厚労省の「専門検討会」で議論が行われてきました。近々取りまとめられる予定の「専門検討会報告書」を踏まえて、今秋にも新しい認定基準が策定される見通しです。過労死弁護団はプロジェクトチームを作り(私もメンバーの一人として参加)、1月15日、5月13日の二度にわたって「緊急意見書」を作成し、専門検討会に提出。その中で、現在の認定基準が、労災と認定する時間外労働時間数を、①発症前1か月間に100時間、又は②発症前2か月から6か月の間に平均80時間としているのを、「65時間」に変更すべきだと主張しました。

◆そのような中、5月17日、WHO(世界保健機関)とILO(国際労働機関)は、週55時間以上働く長時間労働者は、標準的な労働時間(週35~40時間)と比較して、脳卒中のリスクが35%、虚血性心疾患のリスクが17%高くなるという調査結果を発表しました。週55時間の労働は、労働基準法が定める週40時間の法定労働時間を15時間超えるもので、月当たりにすると月65時間程度の時間外労働時間となり、上記の私たちの「緊急意見書」の正しさを裏づけるものです。

                              (弁護士 岩城 穣)

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