Q
民法が改正されて、成年年齢が18歳に引き下げられると聞きました。具体的にはどのようなことが変わるのでしょうか?
A
はじめに
1896年の民法制定以来20歳とされてきた成年年齢が2018年の民法改正により18歳に引き下げられることになりました(平成30年法律第59号)。改正法の施行は2022年とされていますので(平成30年法律第59号附則第1条)、実際に18歳が成年として扱われるのはもう少し先の話になりますが、今後、どのようなことが変わり、どのようなことが変わらないのか、身近な問題に焦点を当てて解説したいと思います。
改正後の関連規定と変更点
1 成年年齢の引き下げ(第4条)
(1)現行民法第4条は、「年齢20歳をもって、成年とする。」と定めていますが、改正後第4条は、「年齢18歳をもって、成年とする。」と改められます。
(2)そもそも、成年が20歳に設定された理由については明らかではありません。もともとは古代の律令制の下において租税負担を負うべき年齢である丁年という概念があり、この丁年年齢を20歳と定めた明治9年太政官布告41号の規定を旧民法がそのまま承継し、現行民法の起草過程においてもほとんど議論がなされないまま今日に至ったということのようです(新注釈民法(1)404頁)。
(3)なお、改正民法の施行時に18歳以上20歳未満の者は、既に婚姻している場合を除き、施行日(2022年4月1日)に成年に達したものとされ(平成30年法律第59号附則第2条2項)、施行日に既に婚姻により成年として扱われていた者は、施行日に18歳未満であっても、成年として扱われることに変わりありません(平成30年法律第59号附則第2条3項)。
2 婚姻適齢の見直し(第731条)
現行民法第731条は、「男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。」と定め、男女の婚姻適齢について異なる取り扱いをしていました。しかし、改正後第731条は、「婚姻は、18歳にならなければすることができない。」と改め、婚姻適齢についての男女のとり扱いの区別はなくなります。
3 未成年者の婚姻について 父母の同意の規定の削除
これまで、成年年齢(20歳)と婚姻適齢(男18歳、女16歳)との間にずれがあったことから、未成年者が婚姻する場合には父母の同意が必要とされていました(現行民法第737条1項)。しかしながら、改正後は、婚姻適齢についての男女の差がなくなり、成年と婚姻適齢とが共に18歳とされる関係で、未成年者の婚姻に関し父母の同意を要するとの規定が不要となりました。
4 婚姻による成年擬制の規定の削除
これまで、男は18歳、女は16歳になれば、父母の同意を要件として婚姻することも可能でしたので、未成年者が婚姻した場合の夫婦共同生活の自立を確保するため、未成年者は婚姻により成年に達したものとみなす旨の規定が存在します(現行民法753条)。しかしながら、改正後は、成年年齢と婚姻適齢が同じになるため、成年とみなす旨の規定も不要となります。
改正後も変わらない点
1 養親となる者の年齢
成年年齢の引き下げ後も、養子縁組により養親となる者の年齢は20歳以上のまま変更はありません(現行民法では「成年」と記載されています)。
2 飲酒・喫煙・公営ギャンブル等の年齢制限
成年年齢の引き下げ後も、飲酒・喫煙・公営ギャンブル等の年齢制限に変更はなく、「20歳未満の者」は法律で飲酒等が禁じられたままです。
おわりに
個人的には、18歳はまだ未熟な年齢だと感じますが、改正民法の施行後は、18歳でもほとんどの法律行為をひとりで有効に行うことができるようになります。今後は、10代の法律トラブルも多くなることが予想されますので、今まで以上に学校や家庭内における(法)教育の重要性が増していくのではないでしょうか。
(弁護士 井上 将宏)