交通事故の後遺障害を争った難事件が解決

 Aさんは、2019年1月、交差点の横断歩道を自転車で通行中、右折してきた乗用車と衝突。路上に転倒し、頚髄損傷等の傷害を負いました。同年7月まで入院しましたが、手足のしびれ等による機能障害、高次脳機能障害の後遺症が残り車椅子での生活になってしまいました。

 退院後しばらくして依頼を受けた私は、後遺障害の認定を受け損害を確定するために、自賠責保険に被害者請求をしました。何ヶ月も待たされた挙げ句、結果は非該当でした。理由は画像上客観的な医学的根拠が認められない等によるものでした。私は、主治医に非該当決定を見せて助言をもらい、それを元に異議の申立てをしました。Aさんが事故後障害者手帳を交付されていることも証拠に付けました。しかし、異議は認められませんでした。Aさんの意向により、任意保険会社と示談交渉をしましたが、提示額はゼロ。過失相殺1割と素因減額2割(もともと神経症状を発症しやすい頸椎の形状であったという)をすると賠償すべき損害額は700万円程度、治療費が自由診療で1000万円以上既払いになっていたため、むしろ約150万円の過払いだと任意保険会社の担当者は冷酷に言い切りました。「健康保険を使わないからだ」とも。

 新たな有力な証拠がなければ再度の異議を申し立てても結果は変わらないのは目に見えていますので、私は、医学鑑定をしてくれる調査会社を探し大阪弁護士会協同組合特約店のMICに無料相談をしたところ見込みはあるとのことでした。費用が数十万必要なので事故に遭って資力に不安のあるAさんは躊躇していましたが、家族も含めて話し合った結果、依頼することになりました。

 鑑定意見書を添付して異議申立てをしたところ12級が認定され、二百数十万円が自賠責保険会社から振り込まれ、任意保険会社にも12級を前提に交渉し、鑑定意見書を援用して素因減額も認められない旨主張したところ、この春に約500万円の支払いを受ける示談で解決することができました。

弁護士 田中 厚

(春告鳥20号 2024.8.3発行)