- 共同相続人の一人が、長年病気の親の看護をしてきたときに、その親が亡くなった場合、遺産分割においてその相続人の貢献はどのように評価されることになるのでしょうか。
- この点について、民法は、「共同相続人中に、・・・被相続人の療養看護・・・により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみな」すと定めています(民法904条の2第1項)。つまり、遺産が100万円で、そのうち寄与分が30万円だと定まる場合には、残額70万円が遺産分割の対象となるということです。
- 子どもは親に対して扶養義務を負うため(民法877条1項)、療養看護が「特別の寄与」と認められるには、通常の面倒をみるという程度を超えるものである必要があります。その判断にあたっては以下の点を考慮して、社会通念に照らし、当該療養看護が被相続人との身分関係から通常期待される程度を超えるものであるか否かが評価されることになるでしょう。
- ①被相続人の病状等に基づく療養看護の必要性の有無や内容
- ②療養看護を要した期間
- ③看護・介護に当たった相続人の年齢
- ④対価支払の有無や内容等
- 療養看護が「特別の寄与」にあたると判断される場合、その寄与分は、(介護士等の専門家に依頼した場合の日額)×(看護日数)×(減価割合)の計算式により評価される例が多いように思います。減価されるのは、看護のプロではないことと、そもそも扶養義務を負っていることが理由です。
- 審判例では、相続人の一人が20年間被相続人と同居し、最後に入院するまでの10年間は痴呆が目立つ被相続人の療養看護を不審番で行ってきた事案で、最後の10年間の看護は、親族間の扶養義務に基づく一般的な寄与の程度をはるかに超えたものと認めて、当時の看護婦・家政婦紹介所の協定料金を基準として算出した額を4割減価し、6割を寄与分と認めたものがあります(盛岡家審昭和61年4月11日)。
- 寄与分の主張には、法的な評価が不可欠です。寄与分を主張できるか否か、どの程度の金額になるのか、まずは当法律事務所までご相談ください。
(弁護士 松村 隆志)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.61」 2023.9.1発行)