◆今年3月ころから始まった新型コロナウイルス感染拡大の中で、医療、公務、保健、介護、運輸などの分野で過重労働が蔓延しています。また、一般の企業でも会社に出勤せずに働くリモートワークが広がり、労働時間の長時間化やストレスの増大、作業環境の悪化が指摘されています。過労死弁護団全国連絡会議では5月9日と6月20日に、全国でコロナ問題も含めた「過労死110番」電話相談を実施し、多くの相談が寄せられました。
◆6月1日、「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法の一部改正)が施行されました。国が法律で初めてパワーハラスメントを定義し、事業主の雇用管理上の措置義務や関係者の責務、調停制度の設置などを定めた点で意義があります。もっとも、パワハラの定義が狭すぎるうえ、パワハラ自体を「禁止」するものとなっていないなどの不十分点が指摘されていますが、今後、国会の附帯決議や国が作成した指針も含めて活用し、職場の改善につなげていくことが期待されます。
◆現在広がりつつある、複数の職場で働く「複数事業労働者」が過労死・過労自殺した場合の労災認定について、①複数職場での過重負荷を合算して業務起因性を判断し、また②給付額も2つの事業場での収入を合算する労災保険法などの改正が行われ、本年9月1日から施行される予定です(なお、②は通勤災害にも適用があります)。ただし制度が複雑ですので、労災申請にあたっては弁護士に相談することをお勧めします。
◆7月2日、厚労省の「第16回過労死等防止対策推進協議会」が行われ、私も専門家委員の一人として参加しました。私は、①拡大しつつあるリモートワークでの適切な労働時間管理及び作業環境の確保、②「雇用類似の働き方」における労働者の保護のあり方の2点について質問と意見を述べました。
弁護士 岩城 穣
(春告鳥第12号 2020.8.3発行)