2022年に改正された消費者契約法が2023年6月1日から施行されました。消費者契約法は、消費者契約(消費者と事業者との間の契約)に関する民事ルールを定める民法の特別法で、契約の取消権や消費者に著しく不利なため無効になる条項などを定めています。主な改正事項は以下のとおりです。
1 契約の取消ができる場合を拡大
これまでは、事業者に不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知があって消費者が誤認した場合、不退去、退去妨害、不安をあおる告知、契約前に契約による義務を実施する等をしたことにより消費者が困惑して契約した場合に契約を取り消すことができました。今回の改正で、これに加えて、以下の場合も取消ができることになりました。
①勧誘することを告げずに退去困難な場所に同行し勧誘した場合
②威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害した場合
③契約前に契約の目的物の現状を変更し原状回復を著しく困難にして消費者が困惑した場合
2 無効となる契約条項を拡大
これまでは、事業者の故意・重過失の場合の賠償責任の全部または一部免責、軽過失の場合の賠償責任の全部免責、平均的損害を超える消費者の解約料、消費者の解除権を放棄させる、消費者の利益を一方的に害する等の契約条項が無効と定められていました。 今回の改正はこれらに加えて、賠償請求を困難にする不明確な一部免責条項(軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないもの)は無効と定められました。例えば、「軽過失の場合は1万円を上限として賠償します」という条項は有効ですが、「法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します」という条項は無効になります。
3 事業者の努力義務の拡充
これまでは、契約締結を勧誘するに際し、消費者の知識・経験を考慮した情報提供等をする努力義務を定めていましたが、それに加えて、契約締結時だけでなく解除時にも、解除権行使に必要な情報提供、解約料の算定根拠の概要説明等の努力義務が定められました。
弁護士 田中 厚
(春告鳥第19号 2024.1.1発行)