昨年の11月頃、「過労死等防止対策推進シンポジウム」に参加させていただきました。シンポジウムでは、関西大学社会学部の池内裕美教授に登壇していただき、「カスタマーハラスメントの現状と課題」というテーマでお話していただきました。カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)の定義からそのメカニズムや対策方法等について、平易な言葉を用いて非常にわかりやすく解説してくださいました。
カスハラをする人の怒りの度合いは、最初は激しいもののそれ以降は緩やかに下っていき、その段階に併せて、聞き手も柔軟に対応していくこと(専ら傾聴→状況確認→解決の提案→対応終了の挨拶)が大切であることをおっしゃっていました。また、話の内容がこじれたりカスハラが長時間にわたる場合には、人・場所・時間を変えることも必要であることから、折り返しのご連絡をするという対応を検討したり、過度な要求・態度が継続する場合には、関係の解消を告げること(「ご理解頂けなくて残念です。」など。)もあり得るとお話していました。
東京都でも今年の4月からカスハラ防止条例が施行され、カスハラ対策について昨今フォーカスされるようになってきました。
日本人の間では、「極端なお客様ファースト」の考えが、顧客・企業の双方にいまだに根強くあるように思います。それゆえに、顧客側の要求はより苛烈になっていき、企業側はより受け身の対応にならざるを得ず、結果的にカスハラ被害を生み出してしまっているのではないでしょうか。だからこそ、池内裕美教授のお話にもあったとおり、場合によっては、顧客との関係性の解消を告知することも重要であるし、組織内部でのカスハラ対策の取り組みやマニュアル化も今後進めていくべきであると感じました。
弁護士 村西優画
(いわき総合法律事務所メールニュース 春告鳥メール便No.73 2025/2/17発行)