日本国憲法の真価が問われる時代へ(春告鳥第4号 巻頭言)

 残暑お見舞い申し上げます。

 立秋とはいえ、まだまだ猛暑が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 さて、去る7月10日投開票が行われた参院選では、野党も1人区で共闘してある程度善戦しましたが、全体としては、自民・公明の政権与党に一部野党・無所属を加えた改憲推進勢力が3分の2を超え、衆参両院とも「憲法改正の発議」(憲法96条)ができる状況になりました。

 自公両党は例によって選挙中は「改憲問題は争点ではない」としていましたが、安倍首相は従前から「自分の在任中に憲法改正をなし遂げたい」と強い意欲を示してきましたので、これから憲法改正の動きが本格化することが予想されます。

 自民党が2012年に発表した「憲法改正草案」を読むと、「個人の尊重」を否定し、国民の人権を制限し、「緊急事態宣言」を出せば内閣が「法律と同一の効力を有する政令」を定められるなど、背筋が寒くなるような内容となっています。憲法の性格を、「国を縛る」ものから「国民を縛る」ものに変質させているのです。

 一昨年あたりからの「何が秘密かも秘密」とする特定秘密保護法や、他国が攻撃された場合でも自衛隊が出動できる安保関連法の制定などもあわせ見れば、今、日本は大きな歴史の曲がり角に立っていると思います。

 私たち弁護士は、日本国憲法が、私たちが普通に暮らしている日々の生活そのものを守っていることを痛感しています。改めて日本国憲法の真価を、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

(弁護士 岩城 穣)

(春告鳥第4号 2016.8.8発行)