1.年が明けたばかりの今年の元旦、能登半島で大規模な地震が発生しました。甚大な被害が今も続いています。
亡くなられた方に衷心よりお悔やみを申し上げ、また被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
2.1月6日、石川県は住宅の再建費用などを支給する「被災者生活再建支援法」を県内全域に適用することを決めたとのことです。
この法律は、「自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者生活再建支援金を支給するための措置を定めることにより、その生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的」としています(同法1条)。
3.この法律は、1995年1月の阪神大震災後の1996年9月、神戸市にある「コープこうべ」が、全国の生協とともに「地震災害等に対する国民的保障制度を求める署名推進運動」を開始し、全国で実には約2400万人もの署名を集めたことから、1998年に議員立法により成立しました。
これまで鳥取県西部地震(2000年)、前回の能登半島地震、新潟県中越沖地震(いずれも2007年)、東日本大震災(2011年)のほか、各地の台風被害などに適用されてきました。
4.この法律が適用されると、指定された災害で「居住する住宅」が全壊したり半壊した場合に、1世帯あたり最大300万円の支援金が支給されます。
また、石川県は、半壊の世帯が住宅を再建する際は、県独自の支援金として100万円を支給することにしているとのことです。
法制定後、「全壊」「半壊」の認定要件や認定手続きが簡素化されてきましたが、住宅は生活の基盤ですので、被災者救済の観点から、できるだけ広範かつ迅速な支援金の支給が求められます。
5.他方、いうまでもなく、地震で命を落とした人たちには何の支援もありません。今後も「南海トラフ巨大地震」などが予想されており、今回の地震は決して他人事ではありません。「地震・災害大国」の我が国で、本当に国民・住民の命と暮らしを守る防災対策が求められていると思います。
6.なお、被災者生活再建支援法の支給対象は、家屋被害を受けた世帯のみならず、自然災害による長期避難世帯も支給対象としていますが、東日本大震災による福島第一原発事故のために長期避難を余儀なくされている人々に対して、国は「原発事故は、自然災害との因果関係が薄い人災だから、東電が住民の損害を償うべきだ」との理由で適用に応じていません。しかし、福島原発事故の直接的原因は、地震及び地震に誘発された津波という自然現象ですから、地震・津波に起因していることは明らかであり、極めて不当です。
今回の能登半島地震では、能登半島中部の西岸にある「志賀原発」は1、2号機とも定期検査により停止中であったこともあり、幸い大きな被害は出ませんでしたが、ほとんど奇跡に近いといえます。もし志賀原発に大きな被害が出て、多数の住民が避難を余儀なくされたとしても、国は給付金を支給しなかった可能性が高いでしょう。改めて、この地震大国日本で、原発を残しておいてよいのかが問われています。
(弁護士 岩城 穣)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.64」 2024.1.10発行)