子の「認知」について

 認知とは、婚外子を自分の子と認めることを指します。

 結婚している父母の子は嫡出推定が及び、夫の子と推定されます。しかし、結婚していない父母の子は嫡出推定が及ばないので、父の子と認められるには、父の認知が必要となります。

 母と子の親子関係は、分娩(出産)の事実によって認めることができるので(最判昭37.4.27)、法律上母と子との間の親子関係は簡単に認められます。しかし、父と子との親子関係はその事実だけでは認められず、父が子を認知してはじめて、父と子との間に親子関係が認められることになります。父と母が結婚していないとき、母が父に自分の子として認めてもらうために認知が必要なのです。

 父が子を認知すると、子は父を相続する権利を有することになります(民法887条1項)。また、父は子を扶養する義務が生じます(民法730条)。

 ところで、母が外国人で父が日本人のときは、父の認知は子にとって、より重要な問題となります。まず、日本国籍は日本で子が生まれたというだけでは、子は日本国籍を取得することができません。父または母が日本人であるときに取得することができます(父母両系血統主義)。

 先ほど、分娩(出産)の事実で母と子との親子関係が認められるといいました。そのため、母が日本人のときは、簡単に子は日本国籍を得られることになります。

 しかし、母が外国人のときは、分娩(出産)の事実だけでは、子は日本国籍を得られません。そこで、日本人の父と子の親子関係が子の日本国籍の取得に重要な意味を持つのです。

 外国人の母と日本人の父が結婚している場合は、父と子の親子関係は認知を要することなく、日本人の父の子として認められるので、子は日本国籍を簡単に取得できます。

 しかし、母が外国人で父が日本人であり、父母が結婚していない場合、子が日本国籍を得るには、日本人の父の認知を要します。認知がないと子は日本人の子とは認められず、日本国籍を得られません。

 このように、母が父に「子供を認知してください」というのは、ドラマではよく聞く言い回しですが、子にとって重要な意味があるのです。

(弁護士 垣内 浩宣)

(メールニュース「春告鳥メール便 No.57」 2023.4.1発行)