コロナ対策による裁判所の傍聴席制限が撤廃されます

 新型コロナウイルス対策として、2020年10月以降、裁判所の法廷の傍聴席を「1席おき」とするの運用が行われてきました。そのため、過労死事件や労働事件などでは、傍聴席の制限のために多くの傍聴者が法廷に入れない状況が続いていました。

 これについて、ワクチン接種が進んだことなどを受け、最高裁は5月10日、マスク着用の呼びかけを徹底した上で全席利用が可能との事務連絡を全国各地の裁判所に出しました。これを受け、今月下旬から順次、全国の裁判所で全席利用が再開される見込みです。

 もともと、法廷の傍聴席は同じ向きに座り、声を出さないことから、マスク着用の場合の感染リスクは低いといわれる中、一律の傍聴制限は「裁判の公開」(憲法82条)を軽視している嫌いがあったと思います。

 法廷で裁判所の訴訟指揮や証人尋問を見守ることは大変重要です。傍聴制限の撤廃を受けて、改めて積極的な裁判傍聴が期待されます。

(弁護士 岩城 穣)

(メールニュース「春告鳥メール便 No.49」 2022.5.30発行)