夫婦別姓に関する最高裁判決(2021年6月23日)について

 夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、事実婚夫婦が別姓での婚姻届受理を求めた3件の家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷は6月23日、両規定を合憲とする決定を出しました。裁判官15人のうち11人(多数意見)は「合憲」、4人は「違憲」としました。

大法廷は2015年、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とする判決を出していました。

2015年の判決後、内閣府が2017年に実施した世論調査では、選択的夫婦別姓導入への賛成が42.5%と過去最高になるなど、前回判決からの社会的変化が指摘されていました。

 最高裁大法廷による2回目の判断となる今回、合憲を維持するか違憲に覆るのか、判断が注目されていたところ、前回と同じく合憲との判断が示されました。 訴訟で違憲性が問われた民法の「夫婦は夫または妻の姓を称する」とする規定は一見平等であるように思えます。しかし、96%は女性が夫の姓になっており、女性の自由選択が実質的に認められていない現状は、決して平等とは言えません。大法廷は2015年、「家族の呼称を一つに定めることには合理性がある」として、上記民法の規定を合憲と判断しました。ただ2015年の判断においても、裁判官15人中、女性3人を含む5人は「両性の本質的平等に照らすと合理性を欠く」として違憲としていました。

 私は仕事では旧姓を用いています。職場では旧姓を用いるなどいわゆる「通称名」は自由に使用が認められています。そうであるならば戸籍上の姓は一つに定められてもいいのではないか、という意見もありますが、果たして本当にそうでしょうか。 なぜ戸籍上はひとつの姓で「なくてはならない」のか。戸籍であれ、通称名であれ、そもそも自分が名乗る「姓」は強制されるべきものではないはずです。強制されるのであればその理由は何なのか、「合理性がある」という理由として十分なのか、強制を強いられる側にとってそれが納得のいく説明なのか。選択的夫婦別姓でもいいのではないかと考える国民が着実に増えている現状において、最高裁の考えが国民の心から離れてしまわないように願うばかりです。

(弁護士 安田 知央)

(メールニュース「春告鳥メール便 No.38」 2021.6.29発行)