岩城弁護士の過労死問題最前線(2025年7月~2025年11月)

◆7月30日、厚労省は令和6年度に実施した「長時間労働が疑われる事業場」への監督指導結果を公表。監督指導を行った26512事業場のうち、8割以上で労働基準関係法令違反が確認され、そのうち月80時間超の違法な長時間労働が確認された事業場が42.4%に達しています。

◆9月6~7日、過労死防止学会の第11回大会(龍谷大学深草キャンパス)。3つの専門部会、3つの分科会、特別セッション、共通論題のほか、特別企画「過労死等防止対策推進法の意義と限界─施行10年から見えてくる意義と限界、そして課題─」で充実した議論が行われました。岩城弁護士は第2分科会「海外勤務者の過労死 現状報告と課題」で司会を務め、特別企画では「法律制定運動から見えてくる意義と限界」について報告を行いました。

◆9月26~27日、過労死弁護団全国連絡会議の第38回総会(神戸市)。今回の総会では、①最高裁令和7年3月7日判決の意義、②行政段階や訴訟での労働時間の過少認定事例の分析、③自治医大名誉教授の加藤敏先生の講演などが行われました。

◆10月4日、高市早苗氏が自民党総裁への就任会見で「馬車馬のように働いていただきます。私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます」と発言。これについて過労死弁護団全国連絡会議は10月6日、「公務員など働く人々に過重労働・長時間労働を強要することにつながり、政府が推し進めてきた健康的な職場づくりを否定し、古くからの精神主義を復活させるもの」と厳しく批判。実際、その後高市内閣は労働時間の上限規制を緩和する方向で見直しを進めており、警戒が必要です。

◆10月28日、「令和7年版過労死等防止対策白書」が閣議決定され公表。精神障害による労災請求件数が2010年度~2024年度の15年間で3倍以上に増加するなど深刻な状況が明らかに。原因別で見ると、「対人関係」と「パワハラ・セクハラ」が急増。外食産業の労働者に実施したアンケート結果も掲載。顧客による暴力や嫌がらせなどのカスタマーハラスメント(カスハラ)が多いことがわかりました。

◆11月10日、「過労死等防止対策推進シンポジウム大阪会場」では、日本製鉄の統括産業医である宮本俊明氏の講演のほか、事例紹介として株式会社髙島屋から「育児介護両立支援の取組みと法改正への対応」のお話などがありました。

弁護士 岩城 穣
(春告鳥23号 2026.1.1発行)