未来の法曹たちとの「一期一会」

2014年3月9日

 3月の第1週、わが あべの総合法律事務所は、大変な「人口密度」であった。
 元裁判官の森野俊彦先生が客員弁護士として入所し、この1月から活動を開始されたところへ、私が2~3月に弁護修習を担当している司法修習生のH君と、京大ロースクールから3月前半の2週間エクスターンシップで来ているT君の2人が事務所に来ているのである。

 そのうえ、上出弁護士のところに神戸大、中森弁護士のところに阪大のロースクールからそれぞれエクスターン生が来ているので、事務所は4人の若者たちであふれ返っているのである。

 修習生用の机は1つしかないので、他の人たちは相談室の一室に一緒に入ってもらって記録を読んだり勉強したりしてもらっているが、狭くて申し訳ない気持ちである。
 聞くところでは、我が事務所は修習生やロースクール生には結構人気があるとのことである。

 せっかく来てくれているのだから、少しでも多くのことを教えてあげたいと、一生懸命説明したり議論したりするようにしている。それに、食事もできるだけあちこちのお店に連れていってあげるなど、大事にしてあげているつもりである(もっとも、キャリーバッグや記録を持ってくれたりするので、移動は少し楽であるが)。

 私は、2000年(平成12年)に大阪弁護士会と青年法律家協会大阪支部がそれぞれ行っていた「入所前研修」(旧司法試験時代に修習期間が短縮されたことから、4月に修習が開始する前に、独自に弁護修習のようなものを行った)を担当して以降、若い人たちのお世話をするようになってもう15年目になる。
 改めて数えてみると、これまで担当した人は、事前研修15人、京大ローのエクスターン14人、司法修習生6人の合計35人になっていた。

 第1号の事前研修を担当したHさんは、弁護士になって今でもたくさんの過労死事件を一緒に担当してくれているし、兵庫のTさんも過労死弁護団のメンバーとして頑張っている。沖縄で弁護士になったNさんは、欠陥住宅全国ネットの沖縄支部を作って頑張ってくれている。とてもうれしいことである。
 裁判官や検察官になった人もいるし、それ以外の人たちも、いろんな地域、分野で頑張っている。そんな話を聞いたりすると懐かしく、また頼もしく思う。

 先日は、昨年修習を担当し、この1月から九州で弁護士になったO君から、仕事の悩み相談の電話があった。また、数日前は、上記のH君とT君の2人を連れて裁判所の近くを歩いていたら、数年前にエクスターンを担当し、この4月から弁護士になったMさん(女性)とばったり出会って、お互いに懐かしがった。

 もともとエクスターン生は20代前半、修習生は20代後半から30代が多いのであるが、いつの間にか私が年をとったために(T_T)、既に自分の子どもたちの世代になっている。
 しかし、そんな若い人たちと接していると、自分自身も気持ちが若くいられるように思う。

 一緒に過ごすのは修習生が2か月、エクスターンは2週間ほどで、長い人生のごく一時期にすぎないが、お互いに何かを残しあうことができると信じて、未来の法曹たちとの「一期一会」を、これからも大切にしていきたいと思う。

 ※画像は、司法修習生のバッジ。ジュリスト(jurist)の「J」の大文字の筆記体を図案化し、法曹三者である裁判官(青)、検察官(赤)、弁護士(白)の3つの色からできているそうである。デザインとしてとてもよくできていると思うし、このバッジを見ると、自分も修習生時代に戻ったような不思議な気持ちになる。

弁護士 岩城 穣(「いわき弁護士のはばかり日記」No.166 2014年3月9日)