個人が旅行客などに自分の所有建物やマンション住戸を提供して宿泊させる、いわゆる「民泊」が数年前から大きな社会問題となっていましたが、1年前の2017年6月「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が成立し、1年後の今年6月から施行されました。
新法は、
A「住宅宿泊事業者」(家主)に対し、①都道府県知事への届出、②貸出しは年間180日まで、③地域の条例への適合、④衛生の確保、宿泊者への騒音防止説明、近所からの苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示など
B「住宅宿泊管理業者」(管理会社)に対し、①国土交通大臣への登録、②上記A③の代行など
C「住宅宿泊仲介業者」(仲介業者)に対し、観光庁長官の登録など
を義務づけました。
また、「住宅」の要件として、
(1) 設備要件(台所、浴室、便所、洗面設備の完備)
(2) 居住要件(現に居住の用に供され、又は入居者の募集が行われていること)
が要求されました。
このように、相当高いハードルが設定されたうえ、届出申請手続が複雑なこともあってか、観光庁の発表では今年6月15日時点でAの住宅宿泊事業者の届出は3728件、そのうち受理されたのは2210件にとどまり、大半の事業者は撤退しつつあるといわれています。
いろいろな近隣トラブルや不祥事(家主によるノゾキなど)も多く発生している中、このような制約がかかるのはやむを得ないことかもしれません。
(弁護士 岩城 穣)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.2」 2018.6.26発行)