法律相談Q&A(相続が発生した時 預貯金はどうなる?)

Q
 先日、父が亡くなりました。遺言はありません。法定相続人は長男の私と弟、妹の3人です。父の遺産は預貯金が500万円ほどあるくらいですが、私は父が亡くなる前、生活費を約100万円立て替えています。また、妹は結婚する際に、父から200万円をもらっています。父の遺産を分けるにはどうしたらよいでしょうか?
A

1 以前の最高裁判所は、定額郵便貯金を除く預貯金については、可分債権として相続開始と同時に当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するという考えをとっていました(最高裁昭和29年4月8日判決等)。これによれば、3人の相続人がそれぞれ500万円の3分の1ずつを銀行から払い戻してもらえる建前になります。
 ところが最近、最高裁は判例を変更し、預貯金も不動産や証券などと同じように遺産分割の対象になるとしました(最高裁平成28年12月19日大法廷決定)。その結果、本件でも500万円の預貯金について、共同相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。


2 本件では、妹さんが生前200万円の贈与を受けていたということで、計算上いったんそれを持ち戻し、遺産総額を700万円とみなしたうえで、そこからあなたが立て替えた100万円を負債として返してもらうことができます。その結果遺産総額は600万円となり、それを3人で分割するので、1人200万円となりますが、妹さんはすでに200万円をもらっているので、結局新たにもらう分はゼロになり、あなたと弟さんはそれぞれ200万円ずつをもらえることになります。


3 遺産分割協議は3人全員で行い、全員が自筆で署名捺印した「遺産分割協議書」を作成し、これを銀行に示せば払い戻しを受けることができます。もし協議が難しいようでしたら、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるのがよいと思います。 相続の問題はいろいろとややこしい問題が多いうえ、相続人同士が感情的になって協議がうまく進まない場合もありますので、まずは弁護士にご相談ください。

(弁護士 安田 知央)

(春告鳥第8号 2018.8.8)