◆5月30日、厚労省の第24回過労死等防止対策推進協議会が開かれました。過労死防止法に基づいて設置されたこの協議会は、年2、3回開かれ、過労死等の防止対策の実施状況及び今後の取組みについて、20人の委員がそれぞれ意見を述べあいます。今回の協議会で私は、①「フリーランス」の定義、②フリーランスと呼ばれる人々についての就労環境や過労死等の現状についての調査研究、③現在も用いられている1985年に作られた「労働者性の判断基準」の見直しの3点について質問し、意見を述べました。
◆6月30日、厚労省が「令和4年度の過労死等の労災補償状況」を発表しました。脳・心臓疾患の労災請求件数は803件、うち支給決定件数は194件でいずれも微増ですが、発症前の時間外労働時間が1か月あたり「60時間以上80時間未満」が前年の29件から49件に増加していることは、2021年9月に脳・心臓疾患の認定基準がやや緩和されたことが影響していると思われます。また、支給決定件数の年齢別では、「30歳~39歳」が5.2%から9.3%に増加していることが注目されます。30代の若さでも、脳・心臓疾患を発症して労災認定される人が多くいるのです。
精神障害では、請求件数は2683件で前年比337件、支給決定件数は710件で前年比81件の大幅な増加となりました。支給決定件数の出来事別では、「上司等からパワーハラスメントを受けた」が147件で最も多くなっています。過労死防止法が制定されて8年が経ち、また「働き方改革」が叫ばれていますが、過労死や過労による精神障害は決して減っていないことがわかります。
◆7月4日、約1年半にわたって行われてきた厚労省の「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」が「報告書」をまとめました。これを踏まえて、今秋にも精神障害の認定基準が改定される見通しです。「発症後増悪」の認定要件の緩和や「業務による心理的負荷表」の修正など、改善点も多く見られますが、最近、労働時間の認定がより厳格になっていることもあり、この認定基準の改定によって労災認定が大幅に増えるかは予断を許しません。
弁護士 岩城 穣
(春告鳥第18号 2023.8.3発行)