法律相談Q&A これはカスハラにはならないのでしょうか

Q
私は洋菓子店で勤務する者です。お客様から誕生日ケーキ(5千円相当)の発注があり、チョコのプレートに「じろう」と記載するように頼まれていましたが、こちらの不手際で「たろう」と記載してしまいました。後日、お客様が来店され、「年に1度の息子の誕生会が台無しになった!弁償も含めて1万円払え!」と怒鳴られ、辛い思いをしました。これはハラスメントに当たらないのでしょうか?
A

 昨今、顧客等からの暴行や不当なクレームといったカスタマーハラスメント(カスハラ)は、社会問題の一つとなっています。

 カスハラにあたる判断基準のポイントは、①要求内容の妥当性 ②要求実現の為の手段・態様の相当性 ③就労環境への影響 の3点になります。(厚生省作成『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』を参照。)

 今回のケースでは、①顧客の要求内容が、瑕疵ある商品の提供に関して金銭的補償を求めるものです。商品に問題があったことについて指摘することは顧客として当然のことですし、誕生日ケーキということであれば、時期の問題もあるため、単なる商品の交換で解決できない場合もあり、金銭の補償を求めること自体は要求内容として妥当であると判断されうるでしょう。②そして、要求する金額が1万円と、ケーキ代金以上の補償を求めています。この点については、ケーキが年に1度しかない誕生日のために用意される特別なものであることを考慮すると、ただちに不当であると判断することが難しいケースといえます。

 今回のように、カスハラへの対応を現場判断で行うことは極めて難しく、企業・組織の側に、カスハラ対応マニュアル作成等の体制整備が求められます。こうした中、JR東日本などの各企業でカスハラ対策方針を対外的に打ち出しているところもあります。一度、ご自身の勤務先でのカスハラ対策について確認されてみてもよいかもしれませんね

弁護士 村西 優画

(春告鳥22号 2025.8.3発行)