「結婚の自由をすべての人に」請求控訴事件について

 今年3月25日、大阪高裁で同性婚を認めない民法及び戸籍法の規定が違憲であるとの判断が示されました。近年では、こうした違憲判断が他各地でも示されています。

 今回は、昨年12月13日、福岡高裁において、同性カップルらが同性婚を認めない民法及び戸籍法の規定は憲法に反するとして国家賠償を求めた事件について、違憲の判断が示された裁判例をご紹介します。

●判決概要

 まず、個人の尊重・幸福追求権について規定した憲法13条との関係では、婚姻をするか、誰と婚姻をするかは、当事者の自由であることを前提に、「婚姻の成立及び維持のためには、他者からの介入を受けない自由が認められるだけでは足りず、婚姻が社会から法的な地位を認められ、婚姻に対し法的な保護が与えられることが不可欠である。」として、「婚姻について法的な保護を受ける権利は、個人の人格的な生存に欠かすことのできない権利であり、裁判上の救済を受けることができる具体的な権利であるというべきである。」と判断を示しました。そして、「性的指向は、出生前又は人生の初期に決定されるものであって、個々人が選択できるものではなく、自己の意思や精神医学的な方法によって変更されることはないところ、互いに相手を伴侶とし、対等な立場で終生的に共同生活をするために結合し、新たな家族を創設したいという幸福追求の願望は、両当事者が男女である場合と同性である場合とで何ら変わりがないから、幸福追求権としての婚姻の成立及び維持について法的な保護を受ける権利は、男女のカップル、同性のカップルのいずれも等しく有しているもの」として、同性婚の途を閉ざす現行法は憲法13条に反する旨を判断しました。

 また、法の下の平等について規定した憲法14条との関係でも、同性婚の途を閉ざす現行法は、同性カップルを差別的に取り扱う規定であるとして、違憲であるとの判断を示しました。

 加えて、家族生活における個人の尊厳と両性の平等について規定した憲法24条との関係では、同条の主眼が、旧法下での戸主権や妻の劣位について一掃することにあったとして、「同条が殊更に同性婚を禁止する趣旨で「両性」、「夫婦」の文言を採用したものであったとは認められない。」と判断しました。そして、同性婚の途を閉ざす現行法が、個人の尊重を規定する憲法13条に反していることから、「婚姻に関する法律は個人の尊厳に立脚して制定されるべき旨を定める憲法24条2項に違反することは明らかである。」と判断しました。

 一方で、同性婚の途を閉ざす現行法の規定を巡る下級審裁判所の判決は様々で、最高裁判所による統一的判断も未だ示されてもいないことから、国会議員による立法不作為については、故意・過失を認めることは困難であるとして、国家賠償の請求を棄却しました。

●判決の意義・今後の展開

 本判決では、『婚姻について法制度による保護を受ける権利』が具体的権利であると判断がされた点に大きなポイントがあります。この点、日弁連会長は、2025年1月15日付で声明文を発表し、「とりわけ福岡高等裁判所判決が、婚姻について法制度による保護を受ける権利が憲法13条の幸福追求権として保障され、裁判上の救済を受けることができる具体的な権利であると明確に認めた点は画期的であり、また、同性の当事者を異性の場合と同じ法的な婚姻制度の対象とすべきことを憲法が求めていることを明示した点は高く評価できる。」と言及しています。

 一方で、国家賠償責任については認められなかったため、原告らは上告しています。

 また、福岡県では今年3月、性的少数者の方々が、その性的指向や性自認にかかわらず人生を共にしたい人と安心して生活できるよう、県として取り組む必要があるとの考えのもと、「福岡県パートナーシップ宣誓制度」を打ち出しています。

 今後の動向についても注目していきたいところです。

弁護士 村西優画
(いわき総合法律事務所メールニュース「春告鳥メール便」2025年5月16日発行)