Q
私は小さな飲食店を営んでいます。最近、障害のある方への配慮が義務化されたと聞きました。実際に障害のある方が来店されたときには、どのような配慮が必要となるのでしょうか。
A
令和6年4月より「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の一部が改正され、事業者に「合理的配慮の提供」が義務づけられました(改正法8条2項)。
改正法では、事業者に対し、①障害のある人から「社会的障壁を取り除いてほしい」という意思の表明があった場合には、②その実施に伴う負担が過重でない範囲で、③社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をすることを求めています。
たとえば、車いすで来店した方がいて、「車いすのまま着席したい」という申出があった場合、備え付けの椅子を片付けて車いすのまま着席するスペースを確保することなどが合理的配慮として考えられます。
他方、法律にいう「合理的配慮」は本来の業務に付随するものに限られます。たとえば、障害のある方が来店されて食事介助を求める申出があった場合、食事介助を事業の一環として行っていないことを理由として介助を断ったとしても、合理的配慮の提供義務には反しないでしょう。
以上はあくまで一例であり、合理的配慮の内容は具体的場面や状況によって異なります。対応に迷った場合にはインターネットにある「事例データベース」や「合理的配慮等具体例データ集」などを参照してみてはどうでしょうか。 大切なのは、事業者と障害のある方との間で相互に対話を重ね、共に解決策を検討していくことです。「前例がない」「何かあったら困る」といって障害のある方からの申出を断るのではなく、過重な負担とならない範囲で、どうしたら社会的な障壁を取り除くことができるか考え、対応することが、法律の求める「配慮」といえるでしょう。
弁護士 村西 優画
(春告鳥21号 2025.1.1発行)