若者の過労自殺事件で、会社が全面謝罪し和解が成立

2013年12月30日

 就職氷河期であったために就職できず、5年間のアルバイト生活後、ようやく正社員として就職できた(と本人は思っていた)27歳の若者が、入社してわずか4か月弱で過労自殺した事件の民事訴訟(提訴時に「No.45 若者の過労自殺 3つの新聞記事」で紹介した事件)で、12月25日、大阪地裁で和解が成立した。

 ご家族(両親とお姉さん)が一緒に暮らしている中で被災者がみるみるうちに変化していき、ついに出勤前に自宅ベランダで自死するという衝撃的な経過であっただけに、ご家族の怒りはすさまじく、厳しい裁判であったが、9月11・12日に2日連続で行われた人証調べ(会社の上司たちと両親・お姉さんの尋問)の後、裁判所から和解勧告がなされたのである。
 和解は容易でないと思われたが、原告側と被告側、裁判所の三者間で十分な和解協議を行い、成立に至ることができた。

 和解条項(謝罪、再発防止とその具体宅、解決金の支払いなど)は大変詳細であったうえ、当日は、単に和解条項を読み上げるだけでなく、会社の実質的な代表者と元上司らが出席して、自ら直接ご家族に謝罪の言葉を述べるという、被告会社にとって大変厳しいものであったが、私から見てこれらの人たちの謝罪の言葉と態度は真摯であり、重みのあるものであった。
 また、裁判長が最後にご家族に対して、温かい言葉をかけてくれたことは、とても嬉しかった。

 被告会社が、この事件と和解を教訓として、若者たちに「入社してよかった」と言ってもらえる企業になってくれることを願うと共に、ご遺族の悲しみと怒りが、ほんの少しでも和らぐことができれば、と願うばかりである。

 和解終了後、急きょ司法記者クラブで記者会見を行うことにした。この日は泉南アスベスト第2次訴訟の大阪高裁判決があったこともあり、記者の皆さんも大変なようであったが、朝日、毎日、読売、産経、日経、NHKなどが報道してくれた。
 私にとっても、忘れられない「クリスマス和解」となった。

「いわき弁護士のはばかり日記」No.158(2013年12月30日)より(一部修正)>

※この事件の当事者のコメントが、「依頼者の声」に掲載されています。
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