新しい国会に「過労死防止基本法」制定をアピール──熱気溢れた第6回院内集会──

2013年3月9日

 2013年3月7日、衆議院第1議員会館地下大会議室で、“「過労死防止基本法」の制定を実現する集い”が開催された。
 この「集い」は、署名運動を中心に国会外で広げてきた過労死防止基本法の世論と遺族の声を、直接国会議員の皆さんに伝え、制定への後押しをする集会である。

 会場の前には、この日までに寄せられた署名39万7366筆が、うず高く積み上げられた。

 昨年12月の衆院選で国会議員の大半が入れ替わり、これまで積み重ねてきた私たちの取り組みはどうなるんだろうか、という不安もあったが、実行委員会の皆さんの必死の事前準備と議員の皆様への働きかけが実り、フタを開けてみると参加者は272人と過去最高、参加して下さった議員の皆さんの数も、議員本人19人、秘書の代理参加25人、合計44人にのぼった。

 しかも、自民、公明、民主、維新、みんなの党、生活の党、共産、社民と、ほとんどの政党から幅広く参加があり、次々とマイクを握り、口々に協力を約束して下さったのである。一気に議員立法による過労死防止基本法の制定への道筋が見えた気がした。

 内容もすばらしかった。実行委員長の森岡孝二関西大学教授のあいさつの後、過労死弁護団全国連絡会議の幹事長の川人博弁護士が「なぜ過労死防止基本法が必要か」と題して基調報告を行った。パワーポイントを使って非常にわかりやすく、ていねいな説明で、「なるほど!」と思った人も多かったのではないだろうか。

 続いて、元トリンプ・インターナショナル・ジャパン(下着メーカー)の元社長の吉越浩一郎さんが「過労社会ニッポンを変えるために」と題して、記念講演をして下さった。吉越さんは、「残業ゼロ」を実行しながら、19年間連続の増収を達成した「カリスマ経営者」である。「仕事を楽しむ」「仕事は任せるのが基本」「ノー残業で仕事の密度を濃くする」「会議は即断即決」「8時間は絶対に寝る」など、お話の内容は本当に刺激的だった。

 川人弁護士の報告でも紹介されていたように、日本経団連の「企業行動憲章」も、4項で「従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する。」としている。過労死の防止は企業経営者も含めて全員が一致できるはずだと、改めて感じた。

 あと、過労死遺族や元遺児の皆さんの訴えは胸に迫るものがあった。前厚労大臣の小宮山洋子さんが参加して発言して下さったのも嬉しかったし、過労死問題を考える東大生の「えだまめの会」の学生の発言は、日本の未来を感じさせる、すばらしいものだった。

 今回の「つどい」の前に秋葉賢也厚生労働副大臣、後には西村康稔内閣府副大臣と自民党政務調査会副会長の鈴木淳司衆議院議員と面談することができた。いただいたお話の内容は、過労死防止基本法の実現にとって、本当に力強いものであった。

【写真】(上から)
 ①「つどい」の壇上の横断幕
 ②積み上げられた署名
 ③会場を埋めた参加者
 ④吉越浩一郎さんの記念講演
 ⑤小宮山洋子前厚労大臣
 ⑥西村康稔内閣府副大臣、鈴木淳司議員と

 次回の院内集会は、6月6日(木)の予定である。
 この次の「つどい」が、文字どおり過労死防止基本法を実現するゴールになるよう、気持ちを新たにして頑張りたいと思う。

<「いわき弁護士のはばかり日記」No.110(2013年3月9日)より(一部修正)>