職場のいじめ・パワハラに立ち向かうには──雨宮処凛さんとの対談

2012年11月18日

◆2012年11月16日、エルおおさか南館5階ホールで、シンポジウム「雨宮処凛さんと考える なくせ!職場のいじめ・ハラスメント」を大阪過労死問題連絡会、大阪過労死を考える家族の会、ストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会の3団体の共催で行った(参加者約70人)。
 この取り組みの位置づけは、翌11月17日に大阪独自で行う「過労死・職場のハラスメント110番」のプレシンポジウムという面と、過労死防止基本法制定のための「100万人署名」を大阪で改めて広げる足がかりにしたいという2つがあった。

◆大阪過労死問題連絡会の会長であり全国実行委員会の委員長でもある森岡孝二先生からの開会あいさつの後、具体的な職場のいじめ・ハラスメントの事例報告があった。
 まず、①和田香弁護士からは、パワハラとセクハラで退職を余儀なくされた2人の女性が訴訟を起こしたケースの報告(高裁で和解)。
 ②次に、大手ハウスメーカーに勤めていたが上司のパワハラで自殺に追い込まれた35歳の男性のお父さんの訴え。
 ③そして、地域労組おおさか青年部(1人でも入れる地域労組の青年部の集まり)の書記長の北出茂さんは、団体交渉で解決した7つの事例を紹介してくれた。
 北出さんは、現在の若者がいじめ・ハラスメントに反撃できず狙い撃ちにされる理由として、(1)闘った経験が乏しい、(2)自信がない「ロスゼネ世代」、馬鹿にされる「ゆとり世代」、(3)社歴が浅くスキルがない、(4)非正規に転落することへの恐怖心、の4つを挙げたが、なるほどと思った。

◆その後、この日のメイン・イベント、作家・社会運動家の雨宮処凛(あまみや・かりん)さんと下川和男弁護士の対談が行われた。
 下川さんは高校生などに話すことが多く、聴衆を引き込む話術には定評がある。その下川さんと雨宮さんの対談ということで、わくわくしながら聴いた。
 さすがの下川さんも緊張していた様子であったが、雨宮さんの話を上手に引き出し、まとめていて、とてもよかったと思う。

 雨宮さんの、次のような言葉が印象に残った(私なりの整理である)。
★お金に余裕がなくなると、心に余裕がなくなるが、今は日本中がそうなっている。心に余裕がなくなると、他人のちょっとしたことが許せなくなる。
★たかが働くために生きているわけじゃない。たかが会社の利益をあげるために生きているわけじゃない。働かなくても生きていていいはずだ。生き続けることに条件をつけてはならず、生存は無条件に肯定されなければならない。
★それなのに、「役に立つ人間になれ」と小さい時から教え込まれてきた。
★いじめ・パワハラに対して怒ること自体、自己肯定感とエネルギーが必要。それがないと、いじめ・パワハラを受け入れてしまう。
★パワハラに立ち向かうためには、
 ①合法か違法か、パワハラの定義に当てはまるかどうかという物差しが役に立つ。
 ②最低限の身の守り方(労働基準法や生活保護など)についての知識が必要。
 ③相談相手、話し合える仲間がいること。
★SOSを発信するには、①自分にも生きる価値があるという自己肯定感、②社会や他人への信頼感の2つが必要。
★SOSを発してもらうに、「助けてほしい」と言ってもらえる人間になれていることが必要。
 あなたは、そうなれているだろうか。

 それにしても、雨宮さんの話はとても説得力があり面白い。「ゴスロリ」の服装もとても素敵だった。同世代の若者たちのカリスマ的な代表として、これからも頑張ってほしいし、何か一緒にできたらいいなあと思った。

「岩城弁護士のはばかり日記」No.98(2012年11月18日)より>