2012年7月22日
6月27日に高槻市議会、6月29日に八尾市議会で、「過労死防止基本法の制定を求める決議」が採択された。それぞれの市議会のホームページにアップされている。
地方自治法第99条は「普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる。」と規定されている。今回、これらの市議会は、この制度に基づいて国に対し上記の意見書を提出することになるのである。
5月末、大阪の実行委員会で中心的に頑張ってくれている舟木一弘、林裕悟の各弁護士が、それぞれ2つの市議会に申し入れを行っていたところ、全会派・全議員の一致で採択されるに至ったものである。
高槻市議会で採択された意見書は、次のとおりである(八尾市のほうも、内容はほぼ同じである。)。
過労死防止基本法の制定を求める意見書
「過労死」が社会問題となり、「karoshi」が国際語となってから四半世紀がたとうとしている。過労死が労災であると認定される数はふえ続けており、過労死撲滅の必要性が叫ばれて久しいが、過労死は、「過労自殺」も含めて広がる一方で、減少する気配はない。突然大切な肉親を失った遺族の経済的困難や精神的悲哀は筆舌に尽くしがたいものがあり、また、まじめで誠実な働き盛りの労働者が過労死・過労自殺で命を落としていくことは、我が国にとっても大きな損失と言わなければならない。
労働基準法は、労働者に週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならないと定め、労働者が過重な長時間労働を強いられるのを禁止して、労働者の生命と健康を保護することを目指している。しかし、当該規制は十分に機能していない。
昨今の雇用情勢の中、労働者はいくら労働条件が厳しくても、使用者にその改善を申し出るのは容易ではない。また、個別の企業が労働条件を改善したいと考えても、厳しい企業間競争とグローバル経済の中、自社だけを改善するのは難しい面がある。
このように、個人や家族、個別企業の努力だけでは限界がある以上、国が法律を定め、その総合的な対策を積極的に行っていく必要がある。
したがって、国においては、上記の趣旨を踏まえ、下記の内容の法律(過労死防止基本法)を1日も早く制定するよう強く要望する。
記
1.過労死はあってはならないことを、国が宣言すること。
2.過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること。
3.国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年6月27日
高槻市議会
両議会の議員の皆さんの積極的な対応に心から敬意を表するとともに、少し大げさかもしれないが、日本の民主主義・地方自治もまだまだ捨てたものではないなあ、と嬉しくなる。
もし、日本各地の議会で過労死防止基本法の制定を求める意見書が採択されれば,私たちが取り組んでいる100万人署名に勝るとも劣らない力を持つのではないだろうか。
今回の高槻・八尾市の意見書採択は、全国のトップを切るものであった。
今回の両市の意見書採択を力に、秋以降、各地の自治体で同様の取り組みがなされることを期待したい。
<「いわき弁護士のはばかり日記」No.81(2012年7月22日)より(一部修正)>