2012年3月26日
3月24日、欠陥住宅関西ネットの第15回総会・シンポジウムが、大阪弁護士会館で開かれた。
あいにくの雨模様の天候だったが、内容はすばらしかった。
◆シンポジウムは、代表幹事の私の開会あいさつの後、東日本大震災の被害報告として、宮城県石巻市の大川小学校の保護者(父親)3人の「ビデオレター」が紹介された。同小学校は、地震後児童たちは校庭に集められたのに、108人の児童のうちの実に74人と教職員10名が死亡・行方不明となっている。
大切な子どもを失った3人の父親たちの、「災害に対しては臆病すぎてちょうどいい。」「災害対策が、子どもの命を最優先にしているかを問い直してほしい。」とのメッセージは心に迫るものがあった。
◆圧巻は、大阪市立大学大学院理学研究科の原口強准教授の「必ずやってくる何回地震 ~水都大阪の備え~」と題する特別講演であった。
原口先生は、東日本大震災で津波被害を受けた青森県の下北半島から千葉県房総半島まで走行距離8,000㎞のデータを基に、浸水範囲を記した「東日本大震災津波詳細地図(上・下巻)」を出版された。
120324_2 講演では、地震や津波についての基礎知識を織りまぜながら、東日本大震災の津波被害を、上記地図も使いながら詳細に報告され、改めて今回の大震災のすごさを知った。
しかし、驚愕したのは、私たちの住む大阪について、次のようなことを詳細にお話しされたことである。
120324_3120324_4 ①様々なデータや資料から、「南海トラフ」では100~150年周期でM8クラスの地震が発生しており、今後50年以内には必ずやってくる。
②大阪では海抜0m地帯が多く、10m以下が圧倒的であり、津波の被害も甚大である。
③大阪市内では、地震による被害に加えて、津波によって地下街や地下鉄は水没し、多数の川は瓦礫であふれるだろう。
東日本大震災については、やはり地理的に離れていることもあり、どこか他人事という感じがあったが、よく考えると、同じような地震や津波が大阪で起これば、大阪は壊滅する可能性があるということである。
このお話を聞いて私は、何よりもまず、もっと多くの人々がこのことを知る必要があると思った。
◆もう一つの大きなテーマは、「別府マンション事件」の概要報告(福岡の越川佳代子弁護士)と、つい最近出された第2次差戻控訴審判決の検討(立命館大学法科大学院の松本克美教授)であった。
この事件は、分譲マンションの欠陥をめぐって、
1審(大分地判平成15年2月24日)
→第1次控訴審(福岡高判平成16年12月16日)
→第1次上告審(最判平成19年7月6日)
→第2次控訴審(福岡高判平成21年2月6日)
→第2次上告審(最判平成23年7月21日)
→第3次控訴審(福岡高判平成24年1月10日)
→第3次上告中
という前代未聞の経過を辿っている事件である。
ここでは詳細は書けないが、第1次上告審判決が「ボタンのかけ違え」をしてしまったために、「欠陥」概念に大混乱が生じてしまっているといえる。
第3次上告審に向けて、全国ネットの英知が結集されることを期待するとともに、最高裁には、ぜひこのあたりで良識を示してほしいと思う。
◆最後に、約10年間の長きにわたって関西ネットの事務局長を務め、今総会で退任された田中厚弁護士に花束が贈られた。
この約15年間、ともに欠陥住宅問題に取り組んできた仲間として、私にも万感迫るものがあった。
田中厚さん、本当にお疲れさまでした。
※画像の説明(上から順。原口准教授による。)
①大阪平野の全体。川の水面よりも低い地域が非常に多い。
②大阪で海抜0mの地域。
③南海トラフでは100~150年の周期でM8級の地震が発生している。
④次の「Xデー」はこの50年以内に来ると考えられる。