「大阪過労死家族の会」総会に参加して

 4月16日、「大阪過労死を考える家族の会」の総会が大阪市中央区で開かれた。

 この会は、過労で倒れた被災者本人とその遺族・家族が、お互いに支え会い、励まし合うこと、会として過労死問題を広くアピールしていくことを目的に、1990年12月に結成された。大阪のほか、東京、名古屋、京都、永野、山梨、兵庫、岡山にも「会」があり、これらが集まって「全国過労死家族の会」を作っている(1991年11月結成)。

 突然夫を亡くして、経済的・精神的に大変な中で、夫の業務の過重性を証明する資料を集めて労災申請したり、行政訴訟や民事訴訟を起こすというのは並大抵ではない。家族の会は、このような困難な取り組みを行っている者同士が、お互いに共感し合い、励まし合い、知恵を出し合い、支援し合う団体である。

 私が感動するのは、20年以上の歴史の中で、自分の闘いが終わった人が会に残り、後に続く仲間に助言や支援をしてあげたり、半年前に入会した人が、入ったばかりの人に助言や支援をしてあげたりする中で、みんながお互いに元気になっていくことである。
 会議では、涙と笑いが絶えず、また、参加者が持ち寄ったいろいろなお菓子が回ってくる。
 当初は夫が過労死した妻が多かったが、最近は過労自殺(自死)の遺族が増え、また、若い息子・娘を失った親が非常に多い。

 今回の総会では、27歳で死亡した息子の和哉さんの労災認定を求めて東京地裁で行政訴訟を闘い、本年3月25日勝訴判決を勝ち取り、判決を確定させた西垣迪世(みちよ)さんの勝利の報告とお祝いが行われた。
和哉さんは富士通の子会社にシステムエンジニア(SE)として入社し勤務していたが、2003年9月ころ精神疾患を発症し、休職と復職を繰り返す中、2006年1月、過量服薬のために亡くなった。
一人息子を失った悲しみの中で命懸けで闘った迪世さんのお話は、参加者の心に迫り、あちこちで涙をぬぐう姿が見られた。

 また、今回の総会で特筆されるのは、「地域労組おおさか青年部」の 若者たちと、労働相談を中心に若者の格差・労働問題に取り組む若者主体のNPO法人「POSSE」のメンバーが参加し、交流が行われたことである。

大切な家族の命を奪ったのと同じ違法・過酷な労働現場が今も日本中にあり、それに立ち向かっている若者たちがいる。

 この3つの団体が力を合わせれば、新しい「日本の未来」を作れるのではないか。そんな予感さえ感じた総会であった。

「岩城弁護士のはばかり日記」No.15(2011年4月21日)より>