初めての「過労死白書」が公表─過労死防止の出発点として大きな意義

過労死防止全国センター事務局長 弁護士 岩城 穣

 2016年10月7日、政府は初めての「過労死等防止対策白書」を公表した。これは、過労死等防止対策推進法(過労死防止法)第6条が「政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。」と定めていることを受けて作成された「法定白書」である。
 過労死の実態把握の点でも過労死防止施策の点でも、いまだ十分なものとはいえないが、国として初めて作成し公表した意義は大きく、国際的にみても先駆的なものといえる。

 白書の構成は、「第1章 過労死等の現状」、「第2章 過労死防止法の制定」、「第3章 大綱」、「第4章 過労死防止対策の実施状況」となっているが、第2章と第3章は今年度限りのものなので、メインは第1章と第4章である。
 第1章の「過労死等の現状」では、統計面と労働・社会面(アンケート調査)の両面から過労死等の現状について述べられている。労働時間の長さ、長時間残業の理由、勤務上のストレスを感じている労働者の割合、ストレスについての相談相手、脳・心臓疾患及び自殺の発生状況と労災請求件数・認定件数などについて、興味深い分析がなされている。
 第4章の「過労死防止対策の実施状況」では、過労死防止法と大綱に基づく過労死防止対策の実施状況について報告がなされており、現在行われている対策とその実施状況について知る格好の資料となっている。
 また、今回の白書には、全部で12の「コラム」があり、このうち8つのコラム(過労死110番の歴史、全国と各地の過労死家族の会、過労死防止学会、過労死遺児交流会、全国と各地の過労死防止センターの紹介など)を全国センター関係者が担当した。

 さらに、白書には「資料編」として、関係法令等、関係指針・通達等が網羅的に掲載されている。そのため、白書は「ハンドブック」として活用することが可能となっている。
 この白書が、多くの方々に読まれ、活用されることを期待したい。

<新ストップ!過労死 全国ニュース第3号(2017年1月16日発行>