昨年2月のロシアによるウクライナ侵略開始から、もうすぐ1年になります。ウクライナはアメリカ・イギリスなどから武器供与も受けて抵抗・反撃し、出口の見えない長期戦争になっています。
私たちにとって戦争は「遠い昔のこと」、「遠く離れた国で行われるもの」というイメージがありましたが、今回の戦争では、情報通信機器の進歩もあって、現代の戦争とはどういうものであるかを教えられます。
「大義名分」を掲げて開始され、フェイクの応酬がなされる。戦争に反対する国民やマスコミは弾圧され、都合の悪い情報は隠され、国民の多数が熱狂し喝采する。環境も街も徹底的に破壊される。未来ある若者が最前線に送られ消耗品のように殺されていく。ミサイルやドローンによる空からの攻撃が広く行われ、子どもたちを含め一般市民が攻撃の対象となる。いったん始めてしまうと簡単に終わることができず、最後は原発の破壊や核兵器使用の現実的な危険が高まる‥‥。
1941~45年の太平洋戦争で文字どおり焼け野原になった日本は、その痛苦の教訓として、「われらとわれらの子孫のために、‥‥政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」(憲法前文)、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(憲法9条1項)、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」(同2項)と世界に宣言しました。
ロシアのウクライナ侵略を挙げて、日本も軍備を強化すべきだという動きが強まっています。しかし、いくら日本中にミサイルを配備しても、戦争が始まったらそれ自体が逆に攻撃対象となりますし、日本には多数の米軍基地、何十基もの原発があります。「敵基地攻撃」は相手国から見れば先制攻撃であり、反撃してこないはずがありません。まさに戦争の始まりです。
痛苦の体験を持ち戦争放棄を宣言した日本こそが、世界の先頭に立って、平和外交や、国連を始めとする戦争を起こさせない枠組み作りのために動かなければならないのではないでしょうか。
(弁護士 岩城 穣)
(春告鳥第17号 2023.1.1発行)