裁判所は「絶望」か、それとも「希望」か(春告鳥第10号 巻頭言)

 暑中お見舞い申し上げます。

 私たち国民は、基本的人権や社会正義の最後の砦としての役割を裁判所に期待しますが、原発や基地問題、えん罪事件など政治的・社会的影響の大きい事件ほど、裁判所は現状を追認したり、国や大企業を擁護する判断をしがちです。過労死・過労自殺事件もその例外ではありません。

 ある元エリート裁判官は「絶望の裁判所」という本を書きましたが、別の現役裁判官や裁判官のOBたちは「希望の裁判所」という本を書きました。

 私たちも、悔しい思いをすることのほうが多いですが、この数か月間で、当事務所の弁護士が関わった「ひげ裁判」(大阪地裁)、「ハンセン病家族訴訟」(熊本地裁)、「産婦人科医過労自殺裁判」(広島地裁)で勝訴判決が続きました。こんなとき、「やはり裁判所に希望はある」と感じます。

 画期的な判決を書いてくれた裁判官たちに心から敬意を表するとともに、私たちは決して諦めることなく、裁判所に事実と道理を訴える努力をいっそう続けていきたいと思います。

(弁護士 岩城 穣)

(春告鳥第10号 2019.8.1発行)