「欠陥住宅全国ネット」の事務局長を退任して

 欠陥住宅全国ネット(別名・欠陥住宅被害全国連絡協議会)は、欠陥住宅問題に関わる全国の弁護士、建築士、学者、市民によるネットワークである。深刻な被害を与えた阪神大震災の翌年である1996年12月、被災地神戸で結成されたこの会に、私は結成当初から関わり、99年5月以降、7年半にわたって事務局長を務めてきた。  この間、全国ネットは年2回全国各地で大会を開き、中間検査制度の導入や住宅品質確保法の制定、シックハウス問題、更には耐震偽装問題などの重要なテーマについて討論し、全国ネットとして意見やアピールを出し、立法・行政をリードしてきた。また、「欠陥住宅110番」を実施したり、全国の会員が獲得した勝訴判決について理解を深め、「消費者のための欠陥住宅判例」(第1集~第4集)を発行するなどして、被害救済に努めてきた。

 また全国各地に「地域ネット」を結成して全国を網羅し、全国の会員数は弁護士約550名、建築士約300名を含めて1000名を超えた。機関紙「ふぉあ・すまいる」は、会員のみならず、全国の裁判所や100を超える地方自治体、主要マスコミに送付している。私が立ち上げ管理しているホームページのアクセス数は30万に迫っている。

 どの団体・組織でもそうだが、事務局長というのはなかなか大変である。日々の雑用のみならず、常に全体に目を配り、マスコミ等の対外的な対応も迫られる。また、今後の大きな発展方向と同時に、常に「次の一手」を考えていなければならない。
特に私の場合、大阪過労死問題連絡会の事務局長、更には04年からは民主法律協会の事務局長も兼任しているので、物理的にも精神的にも、正直いってかなりの負担であった。

 昨年の11月の福岡大会で、この全国ネットの事務局長を無事退任することができ、今はほっとしている。

 もちろん、しんどかったことばかりではない。このような大きな組織を作り、運営に関わってきたことは、私にとってすばらしい経験となったし、多くの弁護士、建築士や被害者の方々と知り合ったことは私にとってかけがえのない財産である。また、大会や幹事会で全国各地を訪問したことも、忘れられない楽しい思い出である。

 お世話になった全国の皆さんに、心から感謝するとともに、全国ネットの今後の発展を祈りたい。

 また、最後になるが、私の担当事務局の根木原知子さんも、全国ネットの事務局の一員として私と苦楽を共にしてくれた。その明るくてきぱきとした性格もあり、全国のアイドル的存在であった。身内事で恐縮ではあるが、根木原さんにも心から感謝したい。

【弁護士 岩城 穣】(いずみ第21号「弁護士活動日誌」2007/1/1発行)