1 ここ数年、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)になるための司法試験と法曹養成の制度は、激変しつつある。
一つは、従来の司法試験(「現行試験」といわれる)の合格者数の激増(五〇〇人→一二〇〇人)と、修習期間の短縮(二年→一年)である。もう一つは、法科大学院(ロースクール)の創設(全国で約七〇校)と、その卒業者のための「新司法試験」(昨年の合格者約一五〇〇人)と司法修習(一年間)の開始である。
私たちのころは毎年五〇〇人だった司法試験合格者は、今は二五〇〇人と、五倍にもなっているのである。
裁判所や検察庁、弁護士会は合格者や修習生であふれ、活気はあるが、他方で深刻な就職難が生じており、修習開始前から厳しい就職競争が始まっている。
2 そんな中で、現行試験に合格し司法修習が始まる前の期間、弁護士会や青年法律家協会が行う「事前研修」を担当して七年、ロースクールのカリキュラムとして行われる「エクスターンシップ」を担当して三年になる。この間、事前研修一四人、エクスターン五人の研修を担当させていただいた。
一番多い時は同時に四人の人たちを担当し、ゾロゾロと若い人たちを引き連れて、まるでカルガモの親子のようであった。
3 私の場合、研修生には法律相談や、各種の弁護団会議への参加、裁判所での裁判手続、家庭裁判所での調停などの傍聴など、一日中私について見学してもらっている。また、民法協の権利討論集会、全国過労死弁護団の総会、欠陥住宅全国ネットの大会、日弁連の人権大会など、広く弁護士として行っている活動にもできるだけ参加させてあげるようにしている。法律家を目指している人たちにとって、初めて触れる生の事件、生の取り組みは、本当に新鮮で、刺激的なようである。
4 担当した研修生たちは、一~三年後には次々と法曹になっていく。中には、研修中に過労死事件に触れて、弁護士になって過労死事件に熱心に取り組んでくれている人もいるし、沖縄で弁護士になり、今年5月に予定されている欠陥住宅全国ネットの全国大会の現地事務局をしてくれることになった人もいる。本当にうれしいことである。
私は自分ではまだまだ若いと思っているが、気がつくと、研修生たちの年齢は、私の子どもの年齢に近くなっている。
とはいえ、日本の司法の未来を担う「卵の卵」の皆さんに、少しでもいろいろな事実や取り組みに触れ、一緒に考える中で、少しでも人間味あふれる法曹になってもらえるよう努力をすることは、同時に、私自身の弁護士になった原点を忘れないことにもつながっている。
【弁護士 岩城 穣】(いずみ第23号「弁護士活動日誌」2008/1/1発行)