1 はじめに
令和4年7月8日、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下「法」といいます。)に関する省令が改正されました。以下、特に情報公表に関する改正について説明します。
2 法律の概要
まず、法は、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、関係者(国、地方公共団体、事業主)の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、支援措置等について定めることにより、女性の職業生活における活躍を推進することを目的とするものです。 この目的のもと、法は、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業者に対しては、①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績、②その雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績を定期的に公表する義務を課し、常時雇用する労働者の数が101人以上300人以下の事業者に対しては、①・②の少なくともいずれか一方を定期的に公表する義務を課し、常時雇用する労働者の数が100名以下の事業者に対しては、①・②の少なくともいずれか一方を定期的に公表する努力義務を課しています(法20条)。
3 指針の内容及び改正点
上記①・②で具体的にどのような事項を公表すべきかについては、国の定める事業主行動計画策定指針(法7条1項。以下「指針」といいます。)に定められています。
もともと、指針では、①については、「採用した労働者に占める女性労働者の割合」、「男女別の採用における競争倍率」、「管理職に占める女性労働者の割合」等8項目から1つ以上を選択し、②については、「男女の平均継続勤続年数の差異」、「男女別の育児休業取得率」、「労働者の一月当たりの平均残業時間」等7項目から1つ以上を選択することとされていましたが、今回指針が改正されたことにより、①の項目に「男女の賃金の差異」が加えられるとともに、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業者に対しては一律に公表が義務付けられることになりました(指針第二部、第二、六、別表三)。
情報の公表の意義は、就職活動中の学生等の求職者の企業選択を通じ、女性が活躍しやすい企業であるほど優秀な人材が集まり、競争力を高めることができる社会環境を整備することにより、市場を通じた社会全体の女性の活躍の推進を図ることにあるとされています。
4 さいごに
日本は、世界と比較しても、男女の格差が非常に大きいとされています。世界経済フォーラムが7月13日に発表した「ジェンダーギャップ指数2022」でも、特に経済、政治の分野で評価を下げ、日本は調査対象の146か国のうち116位となりました。これはG7及び東アジア・東南アジア・太平洋諸国内で最下位です。 女性の賃金が低い原因には、妊娠・出産により就業を継続できないこと、長時間労働による仕事と家庭の両立が困難であること、管理職に占める女性比率が低いこと、女性の非正規労働者の割合が高いこと等様々なものがあり、あらゆる面から改善されなければなりません。今回の改正が、事業主の取組みの原動力となり、男女の経済的格差の解消につながることを期待しています。
(弁護士 松村 隆志)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.51」 2022.8.2発行)