厚生労働省から、令和元年(2019年)10月1日に閣議決定された「令和元年版 過労死等防止対策白書」が公表されました。
この白書は、過労死等防止対策推進法に基づき、国会に毎年報告を行う年次報告書で、今回で4回目となります。
私は、厚労省の過労死等防止対策推進協議会の委員の一人として、白書の内容について意見を述べるなどして関与しています。
今回の白書の目玉は、長時間労働の実態があると指摘されている重点業種・職種のうち、建設業、メディア業界における過労死等の要因などの分析がなされている点です。
①建設業における労災認定事案の分析
(平成22年1月から平成27年3月までに認定された脳・心臓疾患、精神障害事案を分析)
・現場監督の精神障害事案について、自殺事案が多く(59件のうち、30件が自殺事案)、発症に関与したと考えられる業務によるストレス要因は、長時間労働や業務量等の変化が多い(59件のうち、長時間労働29件、仕事内容・量の大きな変化21件)。
・特に、現場監督の自殺事案をみると、発症に関与したと考えられるストレス要因は、長時間労働に関連するものが多く(30件のうち、長時間労働19件、2週間の連続勤務7件、極度の長時間労働5件)、その他に業務量の変化、上司とのトラブルや仕事のミス、顧客からのクレームも多い。
②メディア業界における労災認定事案の分析
(平成22年1月から平成27年3月までに認定された脳・心臓疾患、精神障害事案を分析)
・精神障害事案について、20代から30代の若い世代が多い(30件中、20代11件、30代8件、40代7件、50代4件) 。特に自殺事案では全て20代(4件全て20代)。
・発症に関与したと考えられるストレス要因は、長時間労働に関連するものが多く(精神障害30件中、極度の長時間労働7件、恒常的な長時間労働18件)、その他、仕事の量・質の変化や上司とのトラブルに関するものも多い。
過労死白書は、厚労省のサイトからインターネットで誰でも読むことができます。
この機会に、ぜひアクセスしてみてください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html
(弁護士 岩城 穣)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.18」 2019.11.1発行)