動物の殺傷・虐待が厳罰化ー動物愛護法が改正

 2019年6月12日、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)の改正が参院本会議で可決・成立しました。過労死防止法と同じく、超党派議員連盟の提案による議員立法です。

 単身・少人数家庭の増加の中で、猫や犬をはじめとしたペットを大切に飼う人が増える一方で、無責任な遺棄が増え、凄惨な虐待や業者の倒産などによって、罪のない動物たちが殺されたり苦しめられています。

 今回の改正のポイントは、次の4点です。

(1)犬猫の展示販売の8週齢規制

  幼齢の犬猫の展示販売を、これまでの生後7週(49日)から8週(56日)に遅らせました。

(2)業者の遵守基準の具体化

  環境省令で定める業者の遵守基準について、設備の構造および規模、従業員の人数、繁殖回数・繁殖に供する動物の選定、そのほか繁殖の方法に関する事項などについては、今後環境省内の検討会で検討される予定です。施行は2年後です。

(3)マイクロチップの装着・登録義務化

  犬猫等販売業者の段階で装着と登録が義務づけられます。施行は3年後です。

(4)動物虐待に対する厳罰化

  動物殺傷罪の法定刑が、これまでの「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」へ大幅に上がりました。刑法の器物損壊罪は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金、科料」ですので、これまで器物損壊罪よりも軽かったものを、器物損壊よりも重い罪にしたことになります。

  虐待罪と遺棄罪にも、これまでの罰金刑のみから、「1年以下の懲役」が加えられました。

 改めて、動物愛護法の第1条、第2条を見てみると、

(目的)

 第一条 この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵かん養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする。

(基本原則)

 第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。

 2 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。

とあります。

 子どもに対する虐待や、無関係な人々や障害者に対する無差別殺傷が後を絶たないことと、さらに弱い立場にある動物たちが殺傷・虐待されている現状は、根が一つのように思います。「人と動物の共生する社会」は人間にとっても生きやすい社会のはずです。この法改正によって、そのような社会に一歩でも近づくことを願います。

(弁護士 岩城 穣)

(メールニュース「春告鳥メール便 No.14」 2019.7.2発行)