1 相続法改正~配偶者の居住権を保護~ 2018年7月に相続法の大きな改正がありました。紙幅の関係上今回は、亡くなった方(「被相続人」といいます。)の配偶者の居住権を保護するために新設された権利について、ご紹介します。
2 問題となっていたところ
相続が生じた後の配偶者の居住権についてはよく問題になってきました。そもそも、被相続人の配偶者といえどもあくまで相続人の一人です。具体的には、お父さんとお母さんが二人だけで住んでいた家がお父さん一人の名義である場合に、お父さんが亡くなって、お母さんや子供たち相続人みんながその居住不動産を相続し共有する状態となったとき、お母さんがそのまま一人でその不動産に住み続けると、相続人みんなのものにお母さん一人が住んでいることになるので、理論上、お母さんは他の共有者である子供たちに対し、家賃を支払わなければならないということになっていました。これは実情に合わないので、次のように配偶者の居住権を保護する権利が新設されました
3 配偶者の居住権を保護するための方策
(1)配偶者短期居住権(新民法1037条~1041条関係) 配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割により居住建物の帰属が確定するまでの間(最低6か月間)、無償で、その居住建物を使用できるようにする配偶者短期居住権が新設されました。
(2)配偶者居住権の新設(新民法1028条~1036条関係) それに加えて、配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割における一つの選択肢として、終身又は一定の期間、無償で、配偶者にその建物を使用収益させる権利を取得させることができるようになりました。
(3)先に述べた事例で言うと、お母さんは遺産分割が終了するまでの間(最低6か月間)は、一人で今まで通り住むことができますし、遺産分割において終身又は一定の期間その不動産に居住する権利を得れば、それに基づいて住み続けることができます。上記新設規定は2020年4月1日から施行されます。
4 相続が発生すると、これまで当たり前だったことがそうではなくなる、なんていう場面に出くわしたります。相続が生じた後はもちろんですが、できればその前に、気軽に弊所弁護士までご相談ください。
(弁護士 安田 知央)
(メールニュース「春告鳥メール便 No.9」 2019.1.30発行)