平成27年3月31日に民法の改正法案が閣議決定されました。改正法案は、平成30年の施行を目指して大詰めに入っています。民法が改正されるのは120年振りのことであり、この数字だけをみても民法改正が一大イベントであることがわかります。ちなみに、民法とは、私人、つまり我々一般市民同士の関係についてのルールを定めている最も基本的な法律であり、日本でもっとも条文数(1044条)が多い法律でもあります。紙面の関係上、すべての改正点を説明することはできませんので今回は「消滅時効」の点に絞って説明いたします。
現行民法において、「債権は、10年間行使しないときは、消滅する」(167条1項)と規定されています。すなわち、個人間でお金を貸し借りした場合、お金を返してもらうことなく10年間が経過してしまうと、「お金を返してくれ」と言うことができなくなってしまうのです。
しかし、改正法案では、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する」(改正法案166条1項)と改められることになります。すなわち、個人間でお金を貸し借りした場合、今後は5年間で「お金を返してくれ」と言えなくなってしまう可能性があるので気を付けなければなりません。
また、改正法案では、消滅時効の期間が延長されるケースも存在します。現行民法では、医師、薬剤師、設計工事等に関する債権の消滅時効の期間は、短期間(1年間ないし3年間)で消滅すると規定されています。しかし、改正法案では、これらの債権の消滅時効の期間が「5年間または10年間」に延長されることになります。そのほか、改正法案では人身損害についての保護を厚くする必要から、生命身体に関する損害賠償請求権の消滅時効の期間を「20年間」に延長されることになっています(改正法案167条)。
消滅時効は、私達の生活に最も身近なルールの一つです。今までどおりの時効期間であると勘違いしていると、債権自体が消滅していることに気付かなかったり、消滅していないにもかかわらず放置し続けてしまったりすることになりかねません。十分注意するよう心掛けましょう。
(弁護士 稗田 隆史)
(春告鳥第2号 2015.8.1)