法律相談Q&A(養育費の算定基準)

Q
私は今、夫と離婚すべきかどうか迷っていますが、離婚後、夫との間の2人の子(8歳と5歳)の養育費として、夫からどのくらいもらえるのか心配です。養育費の金額を決める基準のようなものがあると聞いたのですが、教えてください。
A

昨今、離婚をめぐる紛争が増加しています。その中でも特に多いのが財産分与や子の養育費、慰謝料といった金銭面における争いです。

 今回は、離婚後における子の養育費の算定基準について、簡単に解説したいと思います。 

 養育費の金額について法律上明確に定めた条文はなく、基本的には夫婦間で協議して定めることになります。もっとも、お互いに離婚後の生活のこともあるので、金額面で折り合いがつかないことは多々あります。

 そこで、実務では、養育費として適正な金額を算定するため、2003年に東京・大阪の裁判官が共同研究して作成した「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」(以下「現算定表」といいます)が活用されています。 

 この表は、子どもの人数や年齢、夫婦の職業や年収といった情報から、その家庭における今後の養育費の金額について、適正妥当な金額の範囲が分かるようになっています。

 現算定表は裁判所でも通用しており、家裁の調停や審判においても、特殊な事情がない限りは、現算定表に従って養育費の金額が算定されることになるので、夫婦間で協議をする場合においても、双方納得の上、スムーズに養育費の金額を決めるための資料として非常に有用であると考えられます。

 もっとも、現算定表については、一部実態に合わない点があり、事案によっては養育費等の金額が著しく低く算定されるといった問題点も指摘されていました。

 そこで、日弁連は、2016年11月、「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」を行い、養育費の金額についての新しい算定方式と算定表(以下「新算定表」といいます)を公表しました。新算定表では、現算定表の問題点が見直されており、養育費の算定金額は、現算定表によって算定される金額の概ね1・5倍となっています。

 この新算定表は、まだ実務においては普及していませんが、新聞等でも報道されるなど注目を集めており、今後現算定表に代わる新たな基準として普及することが期待されています。

 今後、養育費の金額について争いになった場合は、現算定表と新算定表を用いて、自分がどれくらい養育費をもらえるのか、あるいは支払わなければならないのかを検討するとよいでしょう。各算定表は、下記のウェブページで入手することができます。

 現算定表

 http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

 新算定表

(弁護士 元山 裕晶)

(春告鳥第6号 2017.8.8)