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エッセイ
基本的人権の本質─憲法11条・12条

第11条[基本的人権の享有]
國民は、すべての基本的人權の享有を妨げられない。この憲法が國民に保障する基本的人權は、侵すことのできない永久の權利として、現在及び將來の國民に與へられる。
第12条[自由・権利の保持の義務、濫用の禁止]
この憲法が國民に保障する自由及び權利は、國民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第97条[基本的人権の本質]
この憲法が日本國民に保障する基本的人權は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの權利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び將來の國民に對し、侵すことのできない永久の權利として信託されたものである。

 これらの条項は、日本国憲法の中心原理の一つである基本的人権について、その本質と、国民の保持義務を定めたものです。
 日本国憲法は、基本的人権はこの憲法によってはじめて与えられたものではなく、すでに憲法以前に成立しているものと考え(前国家的権利)、憲法はそれを承認し、尊重し、それが不当に侵害されることのないように保障する、という考え方をとっています。  それではどのようにして基本的人権が成立したかについて、憲法は、基本的人権は「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」で、「過去幾多の試練に堪えた」ものであるとしています(97条)。これは、フランス革命などの市民革命を出発点とし、その後の専制支配、軍国主義、ファシズムなどへの抵抗の闘いを指しています。またわが国では自由民権運動や大正デモクラシー、戦前の治安維持法下での進歩的な人々の闘いも当然含まれるべきです。

 
 憲法は、これらの人権獲得のための人類の長い間の闘いを評価し、「侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」と宣言するとともに(11条)、その保持は現在及び将来の国民に「信託」されたものであり、「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とするのです(12条)。
 このような基本的人権に対する考え方、歴史認識は、憲法前文とともに日本国憲法のヒューマニズム、人間の英知に対する信頼を示しています。


 この憲法制定後、多くの人々が、さまざまな市民運動、消費者運動、公害をなくす運動、労働運動、農民運動などで自由と民主主義の擁護・発展、生活向上のために努力してきました。これらは「不断の努力によって、これを保持しなければならない。」という憲法の要請に応えているといえるでしょう。


 そこでの裁判闘争が果たしてきた役割は大きなものがあります。また、日頃行われている裁判も、国民が自らの権利を実現する闘いといえます。そして、その中で弁護士も大きな役割を果たしてき、現在も果たしています。弁護士法第1条が「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」としているのは、右のような憲法の理念を受けたものということができます。私たち法律事務所も、そのような理念をいつも忘れずに頑張って行きたいと思います。

(いずみ第8号「憲法再発見 第3回」1998/8/25発行)

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